食分野の国際シンクタンクNGOのEATは7月15日、G20における健康的で持続可能な食品システムの再考を求めるレポートを発表した。同機関は、経済的に重要な20カ国を対象に実施した国家の食事および食品消費に関するガイドラインを分析。二酸化炭素排出量削減や環境破壊、健康リスクの低減のためには、各国政府の勧告をより野心的なものへと引き上げることが重要だとした。
EATは、ストルダレン財団、ストックホルム・レジリエンス・センター、ウェルカム・トラスト等が設立。世界中で8億人が栄養不足に陥っている一方で、食品生産の3分の1が廃棄されている現状を課題視し、フードシステムの変革を促進している。
同レポートでは、食品関連二酸化炭素排出量の75%を占めるG20の食料消費量と各国の食事ガイドラインに基づき、各国の合計「フードプリント」を算出。同地域で肉・乳製品消費に代わり、果物・野菜・豆類・ナッツの消費を増加させることで、フードプリント40%削減が可能だとした。
食事ガイドラインについては、現在インドネシア、中国、インド、韓国等の一部の国では、健康的で持続可能に近い水準のものを策定している一方、アルゼンチン、米国、EU加盟国等の他の地域では、依然牛肉や乳製品の消費が過剰であり、より多くの野菜、穀物、ナッツへの転換余地があると指摘。このまま地球全体が現在のG20の消費傾向を適用した場合、地球が7.4個分必要になるとし、より野心的なガイドライン策定に加え、消費パターンの根本的な変革を求めた。一部地域では、すでに健康的な食生活の促進に向けた措置が講じられており、中国のガイドラインでは、穀物を主食とし、野菜、牛乳、大豆等様々な食品を食べるよう推奨。魚、鶏肉、卵、赤身肉については適量摂取し、食事と運動のバランスをとるよう促している。
一方、インドネシアやインド等では、持続可能な食事を維持しつつ、誰もが充分に食にアクセスできるようにすることが課題だとし、すべての国民が、手頃な価格で食糧にアクセス可能にすることを優先事項としなければならないと言及。また、国家食事ガイドラインは、公共による食糧調達や、公衆衛生、教育プログラムにも活用できるとした。
食品関連の年間二酸化炭素排出量は12.5Gtで、地球全体の24%を占める。そのうち、5.6Gtは家畜生産と食品廃棄、6.9Gtは米生産、肥料使用、土地転換、森林破壊によるもの。2019年発表の基礎研究では、食糧の増産と消費方法の変化により毎年4.5兆米ドル(約475兆円)の新たなビジネスチャンスがもたらされるという。また、地球および人類への被害額も年間(約602兆円)削減できることが明らかになり、将来的なパンデミックリスクを削減できるとした。
(出所)EAT
【参照ページ】G20 Leadership Critical for Ensuring Healthy Food for Humanity
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