IT世界大手グーグル、フェイスブック、ツイッター、テレグラムは7月5日または6日、中国政府が6月30日に香港国家安全維持法案(香港国安法)を可決したことを受け、香港政府当局へのユーザの個人情報提供を一時停止すると発表した。SNS運営企業等は、裁判所命令等が出た場合にはユーザーの個人情報を提供する方針としているが、この方針を香港に対しては停止する。
今回の決定は、香港特別行政区政府が7月6日に同法第43条実施規則を公示したことに対応するもの。第43条は、香港警察等の法執行機関に対する権限を規定した条文。その中で、「犯罪の証拠を含む可能性のある建物、車両、船、航空機およびその他の関連する場所と電子機器を捜査」については、香港行政長官に実施規則を定める権限を付与しており、それに基づき実施規則が公示された。
【参考】【香港】中国、香港国家安全維持法を制定。域外適用規定も(2020年7月5日)
同実施規則第4条では、電子メッセージが国家安全保障を損なうおそれがある、もしくはそれらの行為を引き起こしうると当局が判断した場合に、SNS運営企業やネットワーク管理企業等に対し、同メッセージの削除、全ての人の同メッセージへのアクセス禁止、全ての人の同SNSそのものへのアクセス禁止を命じることができ、もし従わない場合には当局による強制執行が可能という内容になっている。また、必要と判断すれば、行政長官は、SNS運営企業に対し、個人記録の提出や暗号解除を命じる権限を法執行機関に与えることも記されている。
同実施規則には罰則も明記されている。国家安全保障を損なうメッセージを発信したものには10万香港ドル(約140万円)と懲役1年。偽情報を発信したものには10万香港ドルと懲役2年。命令に従わないSNS運営企業には、10万香港ドルの罰金と懲役6ヶ月。
フェイスブックは7月5日に発した今回の決定について、人権デューデリジェンス上の懸念があり、国際的な人権専門家との協議を終えるまで停止すると発表。フェイスブックが運営しているインスタグラムやWhatsAppについても同様となる。テレグラムも7月5日、グーグルとツイッターは7月6日に同様の措置を表明した。フェイスブック、ツイッター、グーグルのサービスはいずれも中国本土ではアクセスが禁止されており、香港でのみサービス提供している。
一方、中国IT大手ByteDance(字節躍動)運営のTikTokは7月6日、数日以内に香港でのサービス提供から撤退すると発表した。ByteDanceは、海外での個人情報対応懸念に対処するため、中国国内では「抖音」、中国国外では「TikTok」という形で、ブランド名だけでなく運営も分割して行っている。TikTokのCEOは、米ウォルト・ディズニーの動画配信事業「ダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)」のトップを務めていたケビン・メイアー氏。TikTokには、中国本土からはアクセスできない。TikTokの香港での売上は小さく、地域単独では赤字だったとの報道もある。
【参考】【中国】TikTok、EUの「偽情報に関する行動規範」に署名。欧米大手以外で初(2020年6月21日)
また、米マイク・ポンペオ国務長官は7月6日、安全保障の観点から、TikTok等の中国発アプリの使用禁止を検討していることを明らかにした。すでにインドでは59個の中国製アプリへのアクセスがブロックされている。TikTokは、インドでのサービスブロックの影響で、60億ドル(約6450億円)以上の損失が発生する可能性があるという。フェイスブックは、TikTokの対応馬として2018年に投入した「Lasso」を7月7日に終了させる一方、インスタグラム内機能として開発した「Reels」の試験導入をブラジル、フランス、ドイツで実施しているが、このほどインドでも開始すると発表している。
【参考】【インド】政府、中国アプリ59個へのアクセスをブロック。安全保障の懸念。TikTok、WeChat等(2020年7月5日)
香港特別行政区政府の教育局は7月6日、市内の各学校に対し、香港国家安全維持法に違反する可能性のある教材や書籍の審査と撤去を命じており、すでに学校から、市民運動家等の書籍の撤去が始まっている。7月4日には公立図書館からも黄之鋒(ジュシュア・ウォン)氏等の本が撤去された。
【参照ページ】Implementation Rules for Article 43 of the Law of the People's Republic of China on Safeguarding National Security in the Hong Kong Special Administrative Region gazetted
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