国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ、日本国際ボランティアセンター、認定NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会の4団体は6月18日、キリンホールディングスに対し、合併事業提携先のミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)が少数民族を迫害しているミャンマー国軍との繋がりがあり、同提携を解消するよう要求する共同声明を5月22日に同社に送付したことを明らかにした。キリンホールディングスも6月12日、声明に関し、NGO側に対応を開始すると回答した。
声明によると、ミャンマー国軍は、長期に渡り、同国の少数民族に対して深刻な人権侵害や戦争犯罪を犯しており、2017年8月以降は、ミャンマー治安部隊が民族浄化のキャンペーンを展開し、ラカイン州のロヒンギャ・ムスリムに対して、殺害、性暴力、強制退去はじめとする数多くの人道に対する罪を犯したと指摘した。
2018年には、国連が設置した事実調査団(FFM)が、ミャンマー軍による残虐行為が「戦争犯罪および人道に対する罪のレベルに達した」との調査結果を報告。FFMは2019年9月の報告書で、ミャンマー国軍と、軍の関連企業MEHLやミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)と関係する「あらゆる外国の企業活動」が、「国際人権法および国際人道法違反に寄与あるいは関与するリスク」を負っており、「少なくともこうした外国企業がミャンマー国軍の財政能力を支援している」と結論づけている。また、FFMは、現在進行中の、また今後の国際人権法および国際人道法の違反を阻止するために、軍の「財政的孤立」を強く求めている。
キリンはミャンマー・ブルワリー(MBL)とマンダレー・ブルワリー(MDL)の過半数の株を、MEHLとの提携により保有している。キリンは2015年、ミャンマー国軍が所有するMEHLとの合弁事業提携により、MBLの株式の55%を取得し、その後発行済株式総数の4%をMEHLに譲渡。2017年にはMEHLとの別の合弁事業でMDLの株式の51%を取得している。他にも、アムネスティ・インターナショナルによると、ロヒンギャ・ムスリムに対する軍の民族浄化キャンペーンが最高潮に達していた2017年9月から10月に、キリンが出資しているMBLはミャンマー国軍に少なくとも3万米ドルを寄付しているという。
キリンは、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)等の国際的なガイドラインを尊重するとの人権方針を策定している。今回のNGO側は、人権侵害の助長の回避や、発生時の対処をすべきと強く要求した。
キリンが6月12日に実施した回答では、「当社は、ミャンマーでの事業運営に関して国際社会が提起した懸念に対処していく所存」とし、「ミャンマーの人々にとってポジティブな結果をもたらすように、当社がとりうる全ての取り組みと選択肢を検討」していると述べている。また、「合弁事業からの収益が軍事目的で使用されないことを条件」に、「MEHLとの合弁契約を締結」したと説明したが、今回の一件を受け、外部のアドバイザーの協力を得て「当社のミャンマー事業の持分所有について複数の選択肢を検討するプロセスを正式に開始」したと伝えた。
【参照ページ】【声明】ミャンマー:キリンは軍と関係を断つべきだ 日本の大手企業が人権問題について対策をとると説明
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