世界保健機関(WHO)は5月25日、新型コロナウイルス感染症の治療薬として期待されていた抗マラリア薬ヒドロキシクロロキン(HCQ)について、「連帯トライアル」プログラムでの臨床試験を一時停止すると発表した。医学誌ランセットが5月22日、ヒドロキシクロロキンとクロロキンの2種について、10万人の臨床試験結果から単独で用いた場合とマクロライドと併用した場合に致死率が高く、不整脈を誘発すると発表したため。
今回の決定は、「連帯トライアル」の運営理事会が下したもの。「連帯トライアル」は、3月18日にWHOが開始した新プログラムで、新型コロナウイルス治療薬の開発を加速するため、フェーズ3及びフェーズ4の臨床試験に協力する医療機関を世界的に募るもの。参加表明国は100を超え、すでに35カ国400以上の医療機関で臨床試験が行われている。臨床例は3500人を超えた。そのうちWHOが60ヶ国以上に対し同プログラム遂行の支援をしている。
WHOが「連帯トライアル」の下で臨床試験を進めているのは、レムデシビル、ロピナビル・リトナビル、インターフェロンベータ-1a、ヒドロキシクロロキンの4種類。クロロキンも当初は対象だったが、ヒドロキシクロロキンに対象が一本化されたため、早くに外された。そして今回、ヒドロキシクロロキンの臨床試験が、WHOの「Data and Safety Monitoring Committee」が再検討結果を出すまで一時停止されることとなった。
ヒドロキシクロロキンの臨床試験に力を入れていたスイス製薬大手ノバルティスは同日、WHOの決定について声明を発表。ランセットで発表された後ろ向きコホート研究の結果では、因果関係までは示すことはできないとし、致死率が高くなると断定すべきでないとコメントした。
同社は4月20日、米食品医薬品局(FDA)からヒドロキシクロロキンのフェーズ3臨床試験を開始する承認を得ており、試験を進めている。WHOの今回の決定を受けても、ノバルティスは臨床試験をさらに進め、有効な科学データを取得していく考えを示した。
ヒドロキシクロロキンは、米ドナルド・トランプ大統領が、ヒドロキシクロロキンのファンと公言しており、医師の助言を受けた上で毎日服用していることを明らかにしている。米ホワイトハウスは5月31日にヒドロキシクロロキン服用量200万回分をブラジルに送っている。
【参照ページ】WHO Director-General's opening remarks at the media briefing on COVID-19 - 25 May 2020
【参照ページ】Novartis update following WHO Solidarity trial announcement
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら