気候変動に関する金融リスクを検討するための中央銀行・金融当局ネットワーク「気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(Network for Greening the Financial System;NGFS)」は5月27日、金融監督当局向けの気候変動リスク監督に関する先進事例と提言をまとめたガイドを発行した。
【参考】【国際】中銀・金融当局連合NGFS、金融機関監督にTCFD盛り込む提言発表。ブラウン・タクソノミーも(2019年4月18日)
NGFSは当初、英イングランド銀行、ドイツ連邦銀行/独連邦金融監督庁(BaFin)、フランス銀行/仏健全性監督機構(ACPR)、オランダ銀行、スウェーデン金融監督機関、中国人民銀行、シンガポール通貨金融庁、メキシコ銀行の中央銀行8行で発足。EUが進めている気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言の金融監督行政への反映へ、低炭素経済分野のタクソノミー(定義)を支持するとともに、中央銀行自身の投資ポートフォリオ運用でもESG投資を推進することを提唱している。
NGFSには現在までに、さらに、日本、スイス、EU、イタリア、スペイン、オーストリア、ベルギー、ルクセンブルク、ポルトガル、ハンガリー、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、リトアニア、ラトビア、エストニア、ギリシャ、キプロス、アイルランド、マルタ、ジョージア、アルメニア、カナダ、アブダビ、ドバイ、モロッコ、マレーシア、タイ、カンボジア、香港、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、ブラジル、コロンビア、米ニューヨーク州の金融当局、西アフリカ諸国中央銀行等、66の金融監督当局が加盟し、12機関がオブザーバー参加している。
今回のガイダンスでは、気候変動リスクが金融リスクとなる経路の特定、リスクに対応するための監督戦略の策定、監督対象の金融機関のリスク・エクスポージャーの特定、監督対象の金融機関の透明性高い情報開示の確保、金融機関での対策の実施の5つを提言した。
加えて、同ガイダンスは、バーゼル規制の基本コンセプトである「第一の柱:最低所要自己資本比率」「第二の柱:金融機関の自己管理と金融監督上の検証」「第三の柱:市場規律の積極的な情報開示」の3点で、具体的に気候変動リスクを組み入れる手法についても解説した。
またNGFSは、第一の柱である最低所要自己資本比率の設定にあたって、資産アセットを評価するための「グリーン」「非グリーン」「ブラウン」の概念整理や国際協調が必要との考えも見せた。ここでの「グリーン」は気候変動対策に資する分野、「非グリーン」はグリーン以外の分野、「ブラウン」は非グリーンの中でも気候変動を悪化させる分野のことを指す。
そこでNGFSは、概念整理のために、銀行等の市場関係者が実務上で実施している気候変動リスク分析のアンケート結果も発表した。現時点では、企業内部でのリスク分析に際し、公的機関が策定したタクソノミーや分類・原則が各社独自の分類よりも使われていることがわかった。だが、リスク分析の手法や目的については依然として大きな乖離があるとともに、データ不足も指摘された。金融機関任せにリスクマネジメントでは、マクロ・プルーデンスなシステミックリスク対策は難しいという課題も浮き彫りとなった。
NGFSは今後のアクションとして、気候変動シナリオ分析に関するドキュメントを近々発行する予定。また、データと指標に関する作業を開始することも表明した。
【参照ページ】NGFS guides central banks and supervisors towards better management of climate-related and environmental risks
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