ESG評価世界大手蘭サステイナリティクスは5月22日、新型コロナウイルス・パンデミックの影響を受けている自動車メーカー5社を対象に、今後の展望を踏まえたESG分析の結果を公表した。対象には本田技研工業も含まれている。
自動車メーカーは目下、新型コロナウイルス・パンデミックにより大きな打撃を受けている。2020年3月の世界の自動車販売は前年同月比で39%減少。4月には、一時閉鎖していた工場でも、多くの自動車メーカーで生産を再開され始めたが、パンデミックへの対応策で政府との間での緊張感も見られる。
一方、パンデミック発生後、一部の企業は他社とも協力しながら医療現場向けの人工呼吸器の生産を開始。自動車の販売が落ち込む中、人工呼吸器による収益は、パンデミックによる財務インパクトを緩和するだけでなく、パンデミックに立ち向かう企業としてブランドイメージを向上させることも期待される。日本の本田技研工業も、真空ポンプ・圧縮機の製造を専門とする米国Dynaflo社と協働し、米国オハイオ州の工場で人工呼吸器の生産を始めた。
今回の調査では人工呼吸器の生産に乗り出した大手自動車メーカーを対象に、ESG指標を用いて分析。パンデミックにより形成された新しい市場環境の中で、事業再開に際したリスクを抑えながら、生産の多様化に向けた準備ができているのかを評価した。調査対象となった企業は米国のテスラ、フォード、GM、英フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)、日本の本田技研工業の5社。
サステイナリティクスは、人工呼吸器製造という柔軟な事業対応を示す指標と考えられる「製品ガバナンス」「人材」の2つと、今後重要性が高まる「製品・サービスでの二酸化炭素排出量」を入れた3点を強調し、「その他のリスク」も含めた全体のリスク比較を行った。
リスク分析では、30点以上を超えると総合的に「ハイリスク」と判断される。サステイナリティクスは、「製品ガバナンス」「人的資源」の2項目がリスク全体に占める割合は高いと指摘。投資家に対し、注視していくことを提唱した。
製品ガバナンスは、製品の質や安全性、また近年問題が多発している自動車リコールに関連したリスクの指標となる。自動車メーカーは2016年から2019年にかけ、タカタ製エアバッグの異常のために大規模なリコールを経験。企業は今後、人工呼吸器という新たな製品を展開するにあたり、必要に応じて品質マネジメントシステム(QMS)の見直しながら、製品の安全性を確保していく必要が出てくる。製品ガバナンス能力はますます重要となるとみられる。
人的資源は、人材マネジメントや職場環境の安全性に関する指標で、パンデミック中の事業再開に向け非常に重要となる。米国では全米自動車労働組合(UAW)が影響力を持っており、フォード、GM、FCAは工場の再開に際し、UAWからの許可を受ける必要がある。また、UAWが2019年にGMに対し工場の停止するよう求めた40日間のストライキがGMに40億米ドルの損害を与えており、労働組合と良好な関係を構築することが、円滑な工場再開、安全な労働環境基準への遵守を進める上で非常に重要であると言える。
【参照ページ】Vehicles and Ventilators: An ESG Lens on Automakers Pivoting to COVID-19 Solutions
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