米商務省産業安全保障局(BIS)は5月15日、中国IT大手ファーウェイ(華為技術)に対し、海外における半導体製造・設計で米国の技術とソフトウエアの利用制限を計画していると発表した。
BISは、2019年、ファーウェイ及び関連企業114社を規制対象法人リストに追加。これによりファーウェイに米国製品を輸出する企業は、事前に米国政府からのライセンス獲得が必要となり、事実上禁止された形となった。しかしファーウェイは、米国製品の直接購入ではなく、米国技術のライセンス提供を受けた海外の半導体受託製造会社から半導体を購入する形に切り替えることで、規制を迂回する措置に出ていた。
【参考】【アメリカ】商務省、新たに中国28社を製品販売禁止企業に指定。ウイグルでの人権侵害関与が理由(2019年10月11日)
【参考】【アメリカ】商務省、新たに中国5社を製品販売禁止企業に指定。天津海光先進技術投資等(2019年6月25日)
【参考】【アメリカ】商務省、ファーウェイを米企業の製品販売禁止企業に指定。締め出し強化の大統領令も発動
そのためBISは今回、長年実施していた米国製品提供禁止ルールを改訂し、ファーウェイを狙い撃ちにした新たな規制を検討していると発表した。具体的には、今回の規制では、米国輸出規則(EAR)の対象となる外国企業産の品目に、米国のソフトウェアやテクノロジーを活用している半導体設計仕様やチップセットを加えることで、ファーウェイ向けに半導体を販売できなくする。
今回公表された規制案では、まず、ファーウェイや子会社のハイシリコン(海思半導体)が提供した半導体設計仕様が、規制品目リスト(CCL)に挙げられている米国のソフトウェアやテクノロジーを活用した直接製品に該当する場合はEARの規制対象と規定。同時に、CCLに挙げられた米国の半導体製造設備が使われている米国外にある半導体製造工場で生産された半導体チップをファーウェイ等に提供する場合も規制対象とした。但し、半導体製造工場については、過渡な影響を避けるため、ファーウェイ向けに販売や再販されることを認識していた場合のみライセンスが必要との考えを示した。
一方、BISは、今回の規制導入により、米国の半導体製造設備を活用していると思われる世界中の半導体受託製造会社への悪影響を避けるため、5月15日の時点ですでに生産が開始されているファーウェイの設計仕様に基づく半導体については、新ルール施行から120日以内に再販されない限り、規制の対象外にすると言及。規制の対象を新規受注に絞った。
報道によると、半導体導体受託生産世界大手台湾のTSMC(台湾積体電路製造)は、すでにTSMCはファーウェイ向けの半導体の新規受注を停止した模様。同社は同日、米アリゾナ州に半導体工場を建設する計画も発表した。ウエハー生産能力は月産2万個。高スキルの直接雇用を1,600人分創出し、間接的な雇用効果は数千人分とした。2021年に建設着工し、2024年からの生産を目指すという。TSMCは、「常に事業国の法律を遵守し、米国に工場を設立する計画は顧客のニーズに基づくもの」と回答している。
TSMCのアニュアルレポートとIC Insightsの統計によると、TSMCのファーウェイ向けの売上比率は年々上昇していた。2017年にはアップル向け23%、ファーウェイ向け5%だった売上比率は、2018年にはアップル向け22%、ファーウェイ向け8%に。2019年にはアップル向け23%、ファーウェイ向け14%に増加。今回の米国の規制が発動されると、TSMCの2020年の売上は20%減少するとの観測も出ている。
一方、中国政府は4月27日、情報インフラ事業者が国家の安全保障に影響を与えるネットワーク製品やサービスの購入した場合に、政府によるセキュリティレビューを実施することを定めた規則「網路安全審査弁法」を発令。中国製品に対する審査が強化されることに対抗する狙いがあると見られる。
【参考】【中国】政府、情報インフラ事業者に製品・サービスのサイバーセキュリティ審査制度導入 (2020年5月17日)
【参照ページ】Commerce Addresses Huawei’s Efforts to Undermine Entity List, Restricts Products Designed and Produced with U.S. Technologies
【参照ページ】TSMC Announces Intention to Build and Operate an Advanced Semiconductor Fab in the United States
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