みずほフィナンシャルグループは4月15日、2030年までに25兆円のサステナブルファイナンスを実施すると発表。石炭火力発電所の新規建設を資金使途とする投融資は今後一切禁止することも宣言した。
みずほフィナンシャルグループは、環境NGOの気候ネットワークが3月、みずほフィナンシャルグループに対し、株主として、気候関連リスクおよびパリ協定の目標に整合したファイナンスを行うための計画を開示するよう求める株主提案を提出。欧米の機関投資家複数も、それに賛成する意向を示しており、みずほフィナンシャルグループは、このままいくと平穏な株主総会を迎えられない雰囲気となっていた。
【参考】【日本】環境NGOの気候ネットワーク、みずほFGに気候変動株主提案提出。日本初(2020年3月18日)
【参考】【日本】機関投資家総額22兆円、環境NGOのみずほFGへの気候変動株主提案に賛成の意向(2020年4月5日)
今回同社は、グループ全体に適用する「環境方針」を制定するとともに「サステナビリティへの取り組みに関する基本方針」の改定を実施。環境方針の中では、みずほ銀行では、プロジェクトファイナンスでのエクエーター原則遵守を、みずほ信託銀行とアセットマネジメントOneは、ESG課題に関する投資先企業との対話や運用委託先のモニタリング等を通じて、責任ある機関投資家として適切にスチュワードシップ責任を果たすことを明記した。
サステナビリティへの取り組みに関する基本方針の改定で注目されるのは、石炭火力発電に関するセクターポリシー。今回、石炭火力発電所の新規建設を資金使途とする投融資等は行わないと言い切った。同社は2019年5月の発表で、石炭火力発電への投融資については「厳格化」したとし、制限条件を設定していたが、禁止という表現は一切用いなかったことで、批判を浴びていた。メガバンク他行では、現在、三菱UFJフィナンシャル・グループが「原則禁止」、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が「高効率の案件に融資を限定」となっており、今回の改定でみずほフィナンシャルグループがいっきに最も厳しい規定を設けた形となった。
但し、みずほFGは、運用開始日以前に支援意思表明済みの案件は継続、また、二酸化炭素排出量の削減を実現するリプレースメント案件については「慎重に検討の上、対応する可能性があ」るとした。だが、⽯炭⽕⼒発電所向け与信残⾼を2030年度までに2019年度⽐50%、2050年度までに残⾼ゼロとすることを表明し、エクスポージャーを下げていく計画を示した。
【参考】【日本】みずほFG、石炭火力発電投融資ポリシーを強化。但しUSC以上へのファイナンスは続行(2019年5月23日)
【参考】【日本】MUFG、石炭火力発電新設へのファイナンスを禁止。運用子会社では石炭ダイベストメント設けず(2019年5月17日)
【参考】【日本】三井住友銀行、石炭火力発電、パーム油、森林で融資方針発表。USC未満融資禁止(2018年6月19日)
また今回、児童労働・強制労働を行っている事業を投融資禁止事業に選んだ。今後、アセットマネジメントOneでの投資スクリーニング要件にどのように盛り込まれるかに注目が集まる。
積極的に投資する分野を拡大するアクションでは、サステナブルファイナンスと環境ファイナンスで2019年度から2030年度までに合計25兆円。そのうち環境ファイナンスで12兆円とした。当該ファイナンスの定義は、「環境・社会事業を資⾦使途とするファイナンス」と「ESGやSDGsへの対応について考慮・評価、または、条件とするなどESG/SDGs対応を⽀援・促進するファイナンス」という曖昧な表現となっている。対象業務は、融資、引受、投資、運⽤。
設定金額25兆円については、他のメガバンク2行への意識が見られる。MUFGが2019年5月に設定したのは、同期間で、サステナブルファイナンスで合計20兆円、そのうち環境が8兆円。続いてSMFGが2020年4月に発表したのは、環境ファイナンスで10兆円と、MUFGで総額では少ないが、環境対象では多いという設定となった。今回みずほFGは25兆円と一番多い設定金額となった。だが、みずほFGの目標では、投資運用業務も含まれた額である点に注意が必要であり、さらに前述したように定義が非常に曖昧な点が気になる。
【参考】【インタビュー】MUFGが国内民間金融機関初のソーシャルボンド発行 〜グローバル水準での資金使途設計〜(2019年12月27日)
【参考】【日本】SMFG、2030年サステナビリティKPI設定。環境金融10兆円。投融資のインパクト測定は盛り込まれず(2020年4月5日)
今回、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)ガイドラインを踏まえてシナリオ分析結果も発表した。現状の事業構造を気候変動シナリオに応じて転換した場合、2050年までに現行の事業構造よりも約1,200億円から約3,100億円増やすことができると試算した。但し今回は移行リスクしか考慮しておらず、物理的リスクについては「影響は限定的」としつつも今後公表する意思を示した。
これに対し、メガバンク3行の中でいち早くシナリオ分析結果の金額を発表していたSMFGは1月、2050年までに想定される与信関係費用を毎年20億円から100億円と試算しており、みずほFGは今回ほぼ同等の内容を出したこととなる。
【参考】【日本】三井住友銀行、気候変動シナリオ分析で2050年までの与信関係費用を毎年20〜100億円と試算(2020年1月30日)
加えてみずほFGは今回、グループ上級管理職レベルでの「サステナブルビジネス戦略会議」を発足すると同時に、経営陣がリスク管理する「トップリスク」の中に気候変動を加えたことも表明した。さらにTCFDレポートを5月、ESGデータブックを7月、SASBスタンダードへの対応状況を9月、国連責任銀行原則(PRB)への対応状況おを12月に発表する計画をみせた。
これらに対し、株主提案を行っていた気候ネットワークは同日、声明を発表。全体的には歓迎しつつも、運用開始日以前に支援意思表明済みの案件とリプレース案件を継続するとしたことを批判。石炭火力発電所への与信残高削減目標を2050年ゼロといた点についても、「OECD諸国は2030年、世界全体で2040年に石炭火力全廃が求められる中では不十分」とコメントした。
【参照ページ】サステナビリティへの取り組み強化について ~脱炭素社会実現に向けたアクション強化~
【参照ページ】【プレスリリース】石炭火力への投融資方針厳格化を歓迎、 ただしさらなる強化が必要~みずほFG新方針に対する声明~
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