ドイツのミュンヘン地方裁判所は3月中旬、独ESG評価機関大手ISS ESG(ISS Oekom)に対し、評価対象会社の情報開示不足を理由に、低いESG評価を付与する行為の差し止めを命じた。独光学機器Isra VisionがISS ESGに対し差し止め請求の訴訟を起こしていた。同法廷は陪審裁判。
今回の裁判は、ISS ESGがIsra Visionに対し、情報開示不足を理由に最低評価の「D-」を付与したことが理由。Isra Visionは、ダルムシュタット工科大学から1997年にスプンオフする形で創業。現在はフランクフルト証券取引所に上場している。事の経緯としては、ISS ESGがIsra Visionに対しESG評価のための情報開示を求めるメールを同社に送ったが、広告メールと思った同社は対応せず放置。その2週間後、D-が付与されたことを不服とし、弁護士を通じて提訴した。
ISS ESGは、公開情報に基づいて評価を実施しており、公開情報が不足していることで低い格付を得ている企業は他にも数多い。ISS ESGによると、そのことで同社に不服を伝えてきた企業は今回が初という。ISS ESGは、裁判の前に、Isra Visionからの申立を受け、格付を「D-」から「D」に修正したが、以前Isra Vision側は不服だという。
特に今回の係争では、ISS ESGは同社のマテリアリティとして廃水マネジメントや原材料調達を特定し、その分野の開示がないことを問題視した。一方、Isra Vision側は、それらは同社にとってマテリアルではなく、情報開示の必要性がないと主張した。
ISS ESG側の弁護士によると、今回の差し止めは、特定の企業のESG評価だけであって、事業全体には影響がないという。また、Isra Visionは、3月4日、フランク証券取引所のテック業種セクターインデックス「TecDAX」の採用銘柄から外されており、ISSにとって今回の差し止めの意味はなくなったとしている。
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