日本製鉄は2月7日、2019年度の通期業績見通しについて、連結決算で4,900億円の損失が出る見通しと発表した。単体でも1,300億円の赤字となる見通し。日鉄日新製鋼の減損処理で関係会社株式評価損として特別損失747億円を計上することも含む。
今回大幅な赤字となる背景について、同社は「米中貿易摩擦に端を発する製造業向け鉄鋼需要の減退・価格の低迷と、中国鉄鋼ミルの国内インフラ向け増産に由来する原燃料価格の高止まり」と説明。「過去に例を見ない状況に直面」と悲壮感を漂わせた。
今後の対策としては、まず、グループ会社の日鉄日新製鋼の呉製鉄所の全設備および和歌山製鉄所第1高炉と関連設備を休止する。呉製鉄所は、日本製鉄が2019年に傘下に収めた日新製鋼の主力高炉。しかし2019年8月に呉製鉄所で発生した火災の影響で、2基の高炉が低稼働を余儀なくされていた。和歌山製鉄所は、1942年に住友金属工業の主力高炉として運転を開始し、2012年に住友金属工業が新日鐵と合併した後は日本製鉄グループの工場となっていた。
また厚板事業でも、名古屋製鉄所厚板ラインを休止し、鹿島、君津および大分製鉄所の厚板ラインに生産を集約する。薄板事業では、日鉄日新製鋼の堺製造所の電気亜鉛めっきライン、連続焼鈍ライン、No.1溶融アルミめっきラインの3ラインを休止し、君津、名古屋等のラインに生産を集約する。
航空機エンジン向けが主体のチタン丸棒と、原子力・火力発電プラント向けが主体のチタン溶接管に関わる事業からは撤退。製鋼所と大分製鉄所(光地区)は休止する。
ステンレス事業でも、日鉄ステンレスの衣浦製造所の熱延工場を休止し日本製鉄に生産を集約するとともに、精密品製造専用設備も休止し、山口製造所等へ生産を集約する。
構造改革に伴う粗鋼生産能力削減規模は年間約500万t。設備休止による直接的な収益改善効果は約1,000億円を見込む。設備休止の影響を受ける従業員は全体で約1,600人。希望退職は募らず配置転換で対応する方針だが、工場休止により地域社会への影響は大きい。
経営体制でも、「監査役会設置会社」から「監査等委員会設置会社」に移行。役員報酬でも、会長・社長で20%、副社長・常務取締役・常務執行役員で15%、執行役員で10%を1年間返上する。配当も、期末配当をゼロにする。これにより年間配当金は前年度の80円から今年度の0円へと大幅に下がる。
【参照ページ】生産設備構造対策と経営ソフト刷新施策の実施について
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