年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2月6日、運用委託先の運用会社に遵守を求めている「スチュワードシップ活動原則」を改訂した。同原則は、GPIFがESG投資を運用会社に義務付けるために定めたもの。エンゲージメント、議決権行使、投資運用、利益相反管理、コーポレートガバナンスの5つの観点で定められており、初版は2017年に発行。今回、運用会社に対し、スチュワードシップ活動の強化を義務化した。
今回改訂された内容は、複数に渡る。まず、利益相反管理の仕組みを公表することを追加した。初版では、「自社又は親会社、グループ会社等の利害関係先に対して議決権行使を行う場合、第三者委員会等による行使判断や妥当性の検討、議決権行使助言会社の推奨の適用等、恣意性を排除し、ガバナンスのベストプラクティスを追求する仕組みを整えること」としていたが、「整え、公表すること」に改め、公表を義務化した。
また、エンゲージメントについて、新たに3項目を追加した。まず「運用受託機関は、インデックス構成が投資パフォーマンスを大きく左右する要素であることを踏まえ、インデックス会社が実施するコンサルテーションの機会を活用する等、受益者の利益のため、積極的にエンゲージメントを行うこと」とし、インデックス開発会社とのエンゲージメントを義務化。続いて、「運用受託機関は、市場全体の持続的成長の観点から、企業やインデックス会社にとどまらず関係者と幅広くエンゲージメントを行うこと」とし、投資先企業やインデックス開発会社以外の関係者とのエンゲージメントも求めた。そして、「運用受託機関は、エンゲージメントを含むスチュワードシップ活動と運用の連携を図ること」とし、エンゲージメントで得た結果を、投資運用にも反映させることを義務化した。
投資運用では、「運用受託機関は、重大なESG課題について、投資家として考える目標を示し、積極的にエンゲージメントを行うこと」とし、「投資家として考える目標を示し」が加わった。また、「運用受託機関は、PRI(責任投資原則)への署名を行うこと。また、ESGに関する様々なイニシアティブに積極的に参加すること」とし、PRI以外のイニシアチブにも積極参加することが要求された。
投資運用でESGを考慮することの目的については、従来は「被保険者のために中長期的なリスク調整後のリターンの拡大を図るための基礎となる企業価値の向上や持続的成長に資するものであり、投資にESGの要素を考慮することの意義は大きいと考えられることから」を、「運用資産の長期的な投資収益拡大の観点から、企業価値の向上や投資先及び市場全体の持続的成長に資すると考えられることから」とし、目的が「長期的な投資収益拡大」であることを明確にした。
【参照ページ】スチュワードシップ活動原則
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