国連自由権規約人権委員会(HRC)は1月20日、各国政府は、気候危機により命の危険にさられる難民を強制送還した場合、人権侵害となるとの判断を下した。国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルは、今回の声明を画期的なグローバルの判例だとして歓迎した。
今回の事案は、キリバス出身のイオアン・テイティオタ氏が2015年9月、ニュージーランド政府から亡命を拒否され、キリバスへ強制送還されたことが契機。同氏は2016年2月、自由権規約人権委員会(HRC)に対し、同国政府を自由権規約違反で提訴していた。HRCは、国連自由権規約に関する国家を主体とした裁判管轄権を持つ。
自由権規約人権委員会(HRC)は、キリバスが現時点で緊急事態に陥っているわけではないことから、同国政府の判断を違法だとは認めなかった。しかし、将来において気候危機難民の受け入れの際には、人権を考慮した上での判断が必要となるとした。特に、気候変動の影響で難民となった人を強制送還することは、国際法上のノン・ルフールマン原則に反するとの判断を下した。ノン・ルフールマン原則は、国際法上の強行規範(ユスコーゲンス)として確立しており、1951年のジュネーヴ協定と1967年の議定書で成文化されている。
今回のHRCの判断では、気候変動による直接的被害がある国だけでなく、地理的安全性が確保された国にも難民受け入れ義務という形で影響が及ぶ可能性が示唆された。二酸化炭素排出量の多い国を中心に、すべての国にとって、1.5℃目標達成に向けた取り組みの重要性が明確化されてきた。
【参照ページ】UN landmark case for people displaced by climate change
【判決】CCPR/C/127/D/2728/2016
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