投資運用世界大手米ブラックロックのラリー・フィンクCEOは1月14日、投資先企業のCEOに向けた公開書簡を公表した。フィンクCEOは毎年このタイミングで、次の株主総会シーズンを意識した書簡を出しており、通称「フィンク・レター」とも呼ばれている。
今年のフィンク・レターでは、真っ先に気候変動を挙げ、「企業の長期展望を規定するファクター」だと明言した。2019年9月には、世界中で若者の気候変動対応を求めるデモ「グローバル気候マーチ」を展開したが、フィンク氏はこのアクションを取り上げ、「我々もファイナンスを再設計しなければいけない瀬戸際にいる」とデモ参加者と同様の危機感をあらわにした。
具体例としては、「地方債のための市場を再設計することで、地方政府はインフラ需要を満たすことが可能となるか」「もし資金の貸し手が長期的な気候変動インパクトの算定ができず、被災地への火災保険が掛けられなくなるなら、この先の不動産ローンはどうなってしまうのか」「旱魃や洪水により食料コストが高騰したら、インフレ率や金利はどうなってしまうのか」「異常熱波等の気候インパクトにより、新興市場の生産性が落ち込めば、我々はどうしたら経済成長をモデル化できるのか」と投げかけた。
今回の書簡の中でフィンク氏は、数多くのイニシアチブを説明。ポートフォリオ組成やリスクアセスメントにサステナビリティを統合させることや、一般炭(石炭)採掘事業者等のサステナビリティリスク認識、化石燃料を投資除外したポートフォリオの開発、サステナビリティへのコミットメントと投資スチュワードシップの透明性の向上を挙げた。
エネルギー技術については、化石燃料に置き換わる技術はまだ開発されていないという認識を示し、政府と企業が一体となって低炭素エネルギーへの移行を進める必要があると強調した。
加えて、前年までのレターで触れてきた企業の長期的「Purpose(目的)」を再度想起。好ましくない短期志向アクションとしては、医薬品メーカーの卑劣な医薬品価格の引き上げ、資源採掘会社の労災、クライアントを尊重しない銀行等を例示した。企業の情報開示では、SASBとTCFDガイドラインに基づく情報開示を、投資先企業CEOに要請した。ブラックロック自身も、SASBとTCFDガイドラインに則した情報開示を2020年末までに行うと宣言した。
ブラックロックは1月9日、機関投資家の気候変動集団的エンゲージメント・イニシアチブ「Climate Action 100+」にも加盟している。2020年の株主総会シーズンで、積極的に議決権行使していくかに注目が集まる。
【参考】【アメリカ】ブラックロック、気候変動Climate Action 100+に加盟。ついに750兆円資産動く(2020年1月9日)
【参照ページ】A Fundamental Reshaping of Finance
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