東京都は12月27日、2050年に二酸化炭素ネット排出量をゼロ(カーボンニュートラル)にすることを目指す戦略「ゼロエミッション東京戦略」を発表した。さらに重要3分野での方針として「東京都気候変動適応方針」「プラスチック削減プログラム」「ZEV普及プログラム」の3つも同時に策定した。
自治体によるカーボンニュートラルには、大きく2種類の違いがあり、「自治体の事業でのカーボンニュートラル」と「自治体域内のカーボンニュートラル」がある。前者の場合は、庁舎、公営病院、公営学校、公営施設等で使用電力を再生可能エネルギーに切り替えれば概ね達成できるが、後者の場合は、自治体域内にいる事業者や家庭でも、電力や自動車、工場等でカーボンニュートラルを実現する必要がある。
今回の発表した東京都のカーボンニュートラル戦略は、後者の内容。海外の大都市は、後者での目標設定をすることが多く、東京都もそれにならった形と言える。今回策定の「ゼロエミッション東京戦略」は主に6領域の施策で構成。具体的には、「電力」「不動産」「交通・運輸」「資源」「気候変動適応」の6つ。各々については、2030年や2050年に達成すべき目標を一部かなり細かく設定した。
エネルギー
まず電力について、2030年までに都が所有する施設での使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する。そのため、卒FIT電力の調達を進める。これが達成できると「自治体の事業でのカーボンニュートラル」は概ね達成できる目処が立つ。さらに2030年までに、東京都内に太陽光発電設備容量を現在の530MWから1,300MWにまで増やす。また域内の電力の再生可能エネルギー割合を30%にまで引き上げ、省エネによりエネルギー消費量も2000年比38%削減する。続いて2050年までには、域内での使用電力を100%カーボンニュートラルにする。
域内での使用電力を再生可能エネルギー化していくアクションについては、再生可能エネルギー設備やバッテリー導入に対する補助金支給、再生可能エネルギー電力販売事業者と都内の事業者とのマッチング、電力購入契約(PPA)の構築、家庭等での再生可能エネルギー電力のグループ購入、再生可能エネルギーシェアリング等の推進等を挙げた。
また、再生可能エネルギーを活用した水素エネルギー推進でも目標を設定した。2030年までに、家庭用燃料電池を現在の53.8万台から100万台に約2倍に引き上げ、業務・産業用の燃料電池導入も現在の2.3MWから30MWまで10倍以上に増加させる。
不動産
不動産では、「ゼロエミッション・ビルディング(ZEB)」や「ゼロエミッション住宅(ZEH)」を拡大し、2030年までに二酸化炭素排出量を2000年比30%削減。エネルギー消費量も2000年比38%削減する。不動産でも同様に、再生可能エネルギー利用割合を30%まで伸ばす。そのためのアクションとして、既存の大規模不動産には、現行のキャップ&トレード型の排出量取引制度で新たな削減義務率を設定し、地球温暖化対策報告書制度では再生可能エネルギー利用の報告義務を新設する。新築物件には、省エネ性能評価を見直し、最高ランクとなる「ZEB評価」を新設する。また、再生可能エネルギー利用検討義務を導入する考え。制度対象物件も中小規模に拡大する。
2050年には、都内の全建物をゼロエミッションにする。
交通・運輸
交通・運輸では、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)、プラグイン・ハイブリッド車(PHV)の3つ合わせた「ゼロエミッション車(ZEV)」の導入が中心となる。2030年目標では、都内のZEVバス導入台数は、現在のFCVバス16台から、300台以上へと大幅に増やす。それに伴い水素ステーションの都内設置数も現在の14ヶ所から150ヶ所に拡大。公共用EV充電器も、急速充電器を現在の約300基から1,000基に3倍以上にする。小型路線バスは、2030年までに原則ZEV化する。乗用車の新車販売台数に占めるFCVや電気自動車(EV)の割合も2030年までに50%にする。
続いて2050年には、都内走行の自動車は全てZEV化する。
資源
資源では、プラスチック廃棄物、食品廃棄物、一般廃棄物、フロン排出の4つで目標を立てた。プラスチック廃棄物では、「サーマルリサイクル」と呼ばれるごみ発電を推進してきた方針を改め、モノからモノへ水平リサイクルするマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルを重視する方向へ舵を切る。背景としては、再生可能エネルギーを推進し、火力発電所そのものを減らすエネルギー転換政策の中で、ごみ発電所が二酸化炭素排出量削減で果たす役割が減っていくためとした。
そのため、2030年までに、生産して廃棄するプラスチックの量を累積で25%減らすとする国全体の目標に加え、東京都では家庭と大規模オフィスビルからのプラスチック廃棄物の焼却量を2017年の約70万tから40%減らす。2050年には、プラスチックの生産やリサイクルも再生可能エネルギー電力のみで行える状態を目指し、二酸化炭素ネット排出量ゼロのプラスチックの「カーボン・クローズド・サイクル」を目指すとした。
食品廃棄物では、2030年までに2000年比で半減、2050年までに飼料化・肥料化によりゼロにする。一般廃棄物のリサイクル率は、現在の27%を2030年までに37%にするが、2050年の目標は未設定。
温室効果ガスとなる代替フロンについては、2030年までに2014年比で35%削減し、2050年にはゼロにする。代替フロンは、都内の二酸化炭素排出量の8%を占めている。
気候変動適応
気候変動適応については、「自然災害」「暑さ対策」「農林水産業」「水資源・水環境」「自然環境」の5分野で対策を打つ姿勢を示したが、2030年と2050年の具体的な目標設定はなかった。
アクションについては、視線災害対策では、「1時間降水量が75mmや65mmでも対応のできる調節池等の整備」「下水道の雨水排除能力を増強する雨水貯留施設等の整備」「大型化する台風等の自然災害に対応するための無電柱化の推進」「大規模地下街や地下鉄等における浸水対策」「『やさしい日本語』による防災普及啓発」等を、農林水産業では「気温上昇に適合する品目・品種への転換」「強靭な農業施設の整備」等を挙げた。
【参照ページ】ゼロエミッション東京戦略の策定 ~気候危機に立ち向かう行動宣言~
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