内閣官房デジタル市場競争会議は12月17日、巨大IT企業を規制する「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案」の方向性を発表した。初期には、⼤規模なオンラインモールもしくはアプリストアのみを「特定デジタル・プラットフォーム(特定DPF)」として特定し、特別な規制を課す。デジタル広告市場については、来春を目処に中間報告をまとめる。
【参考】【日本】政府設置の検討会、デジタル・プラットフォーマー規制の政策オプション提示(2019年5月24日)
【参考】【日本】公取委、デジタル・プラットフォーマーの優越的地位濫用の考え方案公表。パブコメ募集(2019年9月2日)
今回の規制は、EUや英国で先行していた「デジタル・プラットフォーマー規制」の日本版と言える。海外の大手事業者だけでなく、国内大手事業者も対象となる見通し。
今回の規制の狙いは、独占的な地位による取引慣行上の課題と、独占禁止法上の課題の双方への対応。取引慣行では、一方的な規約変更、取引拒絶、取引の透明性の欠如や、プラットフォーム利用事業者からの合理的要請に対する十分な対応体制のみ整備等が指摘された。独占禁止法上の課題では、抱合せ販売、取引妨害、自社グループを優遇する不公正な取引等が指摘された。
法案の方向性では、契約条件の開示や変更等の事前通知をプラットフォーマーに義務付け、開⽰がなされない場合、当局が勧告・公表を、それでも是正されない場合に措置命令を出せるようにする。特定DPF事業者は、当局が定める指針に基づいて必要な措置をとり、⼿続・体制の整備を⾏う義務も負う。
さらに、特定DPF事業者は、開示及び体制整備の状況について、⾃⼰評価レポートを定期的に当局に定期的に提出することも義務付ける。当局は、レポートに対する評価を公表する。
独占的な地位による取引慣行上の課題では、従来、独占禁止法上の「優越的地位の濫⽤」は、企業間にしか適用されなかったが、企業と消費者間にも整理することを明言したガイドライン「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を、公正取引委員会が、同会議の場で発表した。
同ガイドラインは、特定DPF事業者の定義とは異なり、「第三者にオンラインのサービスの場を提供し、そこに異なる複数の利⽤者層が存在する多⾯市場を形成し、間接ネットワーク効果が働くという特徴を有するもの」と対象事業者を定義。優越的地位の乱用に該当する行為として、「消費者に知らせずに個⼈情報を取得」「必要な範囲を超えて、消費者の意に反して、個⼈情報を取得・利⽤」「個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個⼈情報を取得・利⽤」「消費者がサービスを利⽤するための対価として提供している個⼈情報等とは別に、個⼈情報等その他の経済上の利益を提供させること」を例示した。
また、独占禁止法上の企業結合(M&A)審査では、従来の「市場シェア」の観点とは別に、データの独占等の概念も適用することとする。また、届出義務の基準についても、現行の「国内売上200億円超の企業が同50億円超の企業を買収する場合」等に該当しない場合でも、買収に係る対価の総額が400億円を超えると⾒込まれる場合は公正取引委員会に相談することが望ましいとした。また、該当しない場合に、公正取引委員会の判断で、M&A審査を行えることも盛り込む。
今回の方向性に応じ、個人情報保護法も改正する。まず、個人の権利の範囲を拡大し、保有個⼈データの利⽤停⽌等の請求、第三者提供の停⽌の請求を行いやすくする。また、オプトアウト規定により第三者に提供できる個⼈データの範囲を本人が限定できるようにする。また、⼀定以上の漏洩等、⼀定の類型の場合、委員会への漏えい等報告及び本⼈通知を義務化する。
また、現在の個人情報保護法は、国内法人にしか効力がないが、⽇本国内にいる者に係る個⼈情報等を取り扱う外国の事業者を、罰則によって担保された報告徴収・命令の対象に加える。
【参照ページ】第2回デジタル市場競争会議 配布資料
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