環境シンクタンクの国際水管理研究(IWMI)とグローバル水適応アライアンス(AGWA)は12月5日、気候変動適応と水資源の関係を分析したレポート「Water Background Paper」を公表した。気候変動が水資源に与える影響を明らかにした上で、気候変動適応における水資源管理の重要性を指摘。気候変動関係者と水資源マネジメント関係者の協働不可欠とした。
今回のレポートは、気候変動適応分野の国際機関、適応グローバル委員会(GCA)が毎年発表している気候変動適応の年次報告について、水資源との関連の部分を特に掘り下げたもの。GCAから委託される形でIWMIとAGWAがまとめた。
同レポートでは、はじめに気候変動が水資源に与える影響を具体的に分析。気候変動によって、降水量や河川の流量、蒸発量、土壌水分等で構成される水循環システムに根本的な変化が見られるとし、その結果として気候パターンの変化、洪水・異常気象の増加、海面上昇、干魃の頻発などが起こるとした。2050年までに5億人から31億人の新たな人々が気候変動による水不足に悩まされ、水ストレスの高まると見られる地域は2050年には現在の2倍以上と見られている。
次に、そうした気候変動の水資源に対する影響の適応策を検討。重要な根本的考え方として、強靭性と柔軟性を挙げた。気候変動による水循環システムの変化は不確実要素が大きく、どの地域でどのような影響が出るかを事前に具体的に把握することは難しい。そのため、複数の気候変動シナリオにも対応しうる強靭性と、予期せぬ被害が生じた場合に素早くこれまでの方向性を再検討して新たな状況に適応する柔軟性を兼ね備えることが重要だと指摘した。
また、強靭性と柔軟性を兼ね備えた適応策を考案・実行していくためには、様々なアクターの参加による情報の共有と対策の更新だと指摘。過去のデータがもはや通用しない不確実な気候変動の影響に適応するためには、地方・国の管轄機関や開発銀行、研究機関、現地住民などの様々な機関が協力し合い、それぞれの収集分析した情報を常に共有し合うことで、適応策を常に改善し続けていくことが重要だと指摘した。
さらに、新たな金融スキームについても触れ、気候変動の不確実な要素は従来のリスク概念では捉えきれず、この分野への投資判断を活発化するためにも新たなリスクリターンのスキームが求められていると言及。気候変動による変化は地域ごとに異なるため、地域間格差が広がることにも触れ、不平等が拡大することのない適応策を実施することが重要とも伝えた。
【参照ページ】Quenching Adaptation's Thirst: Resilient Water Management to Guide Climate Action
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