EUの欧州保険・企業年金監督局(EIOPA)は12月17日、欧州企業年金基金(IORP)に対する2019年ストレステスト結果を発表した。EUでは2019年から第2次欧州企業年金(IORP)指令(IORP II)が施行。企業年金は運用プロセスにESGを組み入れることが義務付けられており、今回のストレステストでも、ESG観点のストレステスト結果が初めて発表された。
【参考】【EU】欧州議会、企業年金EU指令改正案「IORP II」可決。ESG投資の全面実施を規定(2016年12月2日)
IORP IIは、投資運用リスクマネジメントに、ESG要素を組み入れることを義務化しており、それに伴いESG要素が、投資ポートフォリオの保護、質、流動性、収益性に与える影響を正しく評価することが期待されている。また、義務ではないものの、ESGを組み入れた投資決定がどのような潜在的な長期インパクトをもたらすかを考慮することも推奨されている。
今回のストレステストは、EUと欧州自由貿易連合(EFTA)を合わせた欧州経済領域(EEA)加盟国にある運用資産総額5億ユーロ(約約610億円)以上の年金基金が対象。調査内容は、企業年金基金の運用資産が負っているESGリスクを定性・定量の両面で評価した。今回の定性評価では、企業年金基金に対する調査の中で、ESG考慮の程度、ESGインテグレーションの手法、ダイベストメント・ポリシー、国連責任投資原則(PRI)等への署名状況、ESGインテグレーションがリスク調整後リターンに与える影響、IORP IIや2017年に改正された株主権利指令がESG考慮に影響を与えたか否か等を回答するよう要求した。
回答結果は、全体の55%は、ESGを考慮していると回答した。そのうち42%は、財務リターンを損なわない限り、ESGを考慮しているとした。国別では、オランダ、スウェーデン、オーストリアでは100%。スペイン91%、ノルウェー83%、フィンランド80%、ドイツ67%。反対にギリシャ、ポルトガル、イタリア、デンマークは低かった。英国、フランスは、今回の報告書では結果が国別に開示されていない。
ESG考慮によるリターン分析を実施している年金基金はわずか19%だった。それでもオランダ85%、オーストリア60%、スウェーデン50%、スペイン50%と高かった。
定量調査では、NASE分類を使い、10業種毎の運用資産の提出を要求。各企業年金基金のカーボンフットプリントを試算した。エネルギー業30%、製造業24%、農林水産業15%、交通・輸送業15%となり、4業種で84%を占めた。
【参照ページ】EIOPA publishes the results of the 2019 Occupational Pensions Stress Test
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