パリ大学の研究者らは11月27日、気候変動が今後の世界の農業及び漁業の生産性に及ぼすインパクトを分析した論文を発表した。世界の平均気温が、2100年に2.6度から4.8度上昇する「RCP8.5」シナリオの下では、2100年に農業・漁業の状況悪化の影響を受ける人口は72億人で、反対に農業・漁業の状況が改善する恩恵を受けるのはわずか2億人と試算した。
今回の論文は、学術誌「Science Advances」に掲載。農業と漁業の今後の生産量低下の見通しと、経済・生活の農業・漁業依存度の双方を算出。それを一人当たりGDPを基にした適応力と関連付け、農業と漁業による世界の脆弱性を割り出した。
RCP8.5シナリオの下では、農業・漁業ともに脆弱性が大きく増すのは72億人。地域では、東南アジア、南アジア、サブサハラ・アフリカ、南米北部等の低緯度地帯が多い。一方、温暖化で農業・漁業状況がプラスの影響を受けるのはロシア、北欧、カナダ等の北半球北部のみで人口では2億人。また、農業が悪影響だが、漁業には好影響となるのは5億人で、その逆で農業は好影響で漁業が悪影響を受けるのは1.4億人。
一方、気温上昇が2℃前後に留まる「RCP2.5」シナリオでは、脆弱性が低下する人口を大幅に少なくできる。農業・漁業ともに脆弱性が大きく増すのは44億人と半数強にまで減る。一方、漁業は悪影響だが、農業の状態は向上するのが21億人となる。
同論文は、気候変動緩和を進めることで、世界の食の状況を大きく改善できると結論づけた。
【参照ページ】Escaping the perfect storm of simultaneous climate change impacts on agriculture and marine fisheries
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