国際エネルギー機関(IEA)は11月13日、世界エネルギー展望をまとめた2019年版レポート「世界エネルギー見通し(World Energy Outlook)2019」を発行した。エネルギーは供給の行き渡る層がいる一方、依然8億5,000万人が電力にアクセスできずにいることや、国際的な二酸化炭素排出量削減目標が掲げられる中、排出量が増加し続けていること等、課題が山積みであることを指摘した。
2019年は、3つのシナリオで将来を予測している。
現行政策シナリオ(CPS)
各国政府が現在の政策を継続する場合、エネルギー需要は年間1.3%増加。2040年には、エネルギー関連の排出量が増大するとした。
宣言政策シナリオ(STEPS)
各国政府が宣言している政策を反映させたシナリオ。2018年度版まで「新政策シナリオ(NPS)」と呼んでいたが、今年からこの名称に変更した。2040年でも、依然数億人が電気にアクセスできず、汚染関連の早期死亡が現在と同等の上昇水準。エネルギー需要は2040年まで年間1%増加し、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーが成長の半分を占める。天然ガスは3分の1を占めるが、石油需要は2030年代に横ばいになり、使用量も減少に転じる。エネルギーは急速な変革を遂げ、一部の二酸化炭素ネット排出量ゼロを掲げる国は供給と消費を大幅に改革する。
米国のシェール産出量は、当初予測より長く維持され、世界の市場、貿易、安全保障を再構成する。米国の年間生産量の成長は、近年と比べて鈍化するものの、2030年までの世界の石油生産量増加の85%、ガス増加の30%を占める。また2025年までに、米国のシェール総産出量は、ロシアの石油とガスの総産出量を上回る。
持続可能な開発シナリオ(SDS)
幅広い燃料や技術により、効率的かつ費用対効果の高いエネルギーがすべての人に提供。大幅な排出削減が達成されたもの。エネルギーの仕組みを迅速かつ広範囲に変更し、パリ協定の目標に則し、気温上昇を1.5℃未満へ抑制する必要がある。
エネルギー安全保障は、世界中の政府にとって依然最重要課題。サイバーセキュリティや異常気象等、新たな危険には常に注意が必要となる。一方、電力セクターの継続的な変革には、技術の変化や電力システムの柔軟な運用へのニーズの高まりに応じた、政府の迅速な行動が必要となる。
省エネ改善は、世界を持続可能な開発シナリオに導くために最も注力すべき要素であるが、現在、省エネの改善速度は鈍化しており、2018年の1.2%は2010年比で半減。本来必要な3%を遥かに下回るとした。同シナリオにおいて、電力は今後20年間で消費量が増加する数少ないエネルギー源の1つ。最終消費に占める電力の割合は、2040年までに石油を上回り、風力発電と太陽光発電の発電量が増加すると予測する。
過去20年間、世界中で建設された石炭火力発電所の90%はアジアのもの。石炭火力発電は潜在的に長い稼働寿命を有するためえ、炭素回収・利用・貯留(CCUS)の導入や、バイオマス混焼型への変更、早期停止等の対応が期待されるとした。
【参照ページ】World Energy Outlook 2019 highlights deep disparities in the global energy system
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