国際エネルギー機関(IEA)は10月30日、東南アジアの将来のエネルギーに関する2019版レポート「Southeast Asia Energy Outlook 2019」を公表した。同地域は今後20年で経済成長とエネルギー需要の増加が見込まれる一方、安全性や持続可能性に関する政策課題も増加すると分析した。また今回、冷房設備と再生可能エネルギー投資に関する2つの別レポートも発行した。
ASEANエネルギー相会合は2018年、ASEANとIEAの強固な連携を唱え、地域電力取引や再生可能エネルギー発電所系統、冷房省エネ、投資等に関する支援を提唱。2019年にはIEAを「重要な戦略的パートナー」として特定し、省エネ、投資、電力システム、エネルギーセキュリティ、データ等の幅広いエネルギー問題の分野で、IEAとASEAN各国は協働してきた。同レポートは、こうした東南アジアのエネルギーリーダーが構想する優先順位についても掘り下げている。
東南アジアでは、現在でも4,500万人が電気にアクセスできずにいるが、2000年以降、電気へのアクセスが大幅に改善を続けており、2030年までに全域へ普及できると見込まれる。産業の成長や同地域の経済発展に伴い、燃料需要は供給を上回る勢いで増加。現行政策では2040年までに60%増加を目標としている。また、化石燃料の大部分は2040年までに純輸入となり、同地域は年間3,000億米ドル以上のエネルギー貿易赤字を抱えると予測される。
化石燃料の中でも、石油は同地域の最大のエネルギー源。また石炭需要も最も急速に増加しているため、地政学リスクへの脆弱性高まりや、大気汚染や二酸化炭素排出量増加等への懸念も高まると分析した。たとえば、同地域が現在の勢いで成長を続けた場合、屋内外の大気汚染にようる年間早期死亡者数は、2018年の推定45万人から2040年までに65万人以上に増加し、二酸化炭素排出量も約67%(約24億t)増加すると予測される。
こうした懸念から、再生可能エネルギーへの投資に注目が集まっている。同レポートでは意図的に政策誘導を行わなければ、再生可能エネルギーの貢献は、エネルギー需要増加分の3分の1を占める程度に収まってしまうと警鐘を鳴らす。民間セクターによる大規模な資金調達やエネルギー産業間での協働が求められるため、具体的なアクションを提言した。
- 地域電力システムの統合やバイオエネルギーの持続可能な活用により、再生可能エネルギーの導入を大幅に拡大する
- 冷却や輸送等の急成長分野で、エネルギー効率の改善に重点を置く
- 持続可能なエネルギー消費と投資判断を促進するため、化石燃料消費補助金を段階的に廃止する
- 炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)等を活用し、石炭火力発電所からの二酸化炭素排出量を削減する
今回のレポートの執筆には、電源開発(J-Power)、東京ガスと、経済産業省資源エネルギー庁所管の一般財団法人「日本エネルギー経済研究所(IEEJ)」も加わった。
【参照ページ】3 new IEA reports provide fresh insights into Southeast Asia’s energy future
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