国土交通省は10月18日、日本の治水計画について「気候変動を踏まえた治水計画」に転換すると発表した。気候変動が顕在化していると認識し、治水計画の強化が必要と判断した。
同省は2018年4月に、有識者からなる「気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会」を設置。気候変動を踏まえた治水計画の前提となる外力の設定手法や、気候変動を踏まえた治水計画に見直す手法等について検討を行ってきた。今回の決定は、その提言に基づくもの。今後、気候変動が進んでも治水安全度が確保できるよう、降雨量の増加を踏まえ、河川整備計画の目標流量の引上げや対応策の充実を図るとした。
但し、今回発表の治水計画にはすでに問題が内在している。同検討会の提言では、今後の気温上昇のシナリオについて、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表した、各国が現行のまま二酸化炭素を排出量し続け気温が4℃上昇するシナリオ「RCP8.5」を前提に、悲観シナリオでも耐えられる治水のあり方をまとめた。その背景には、RCP8.5での影響分析データしかないと説明していた。それに対し、国土交通省は今回、前提条件を引き下げ、気温上昇が2℃にとどまる楽観シナリオ「RCP2.6」を採用。理由を「パリ協定の目標と整合」とした。
「パリ協定の目標と整合」は本来、二酸化炭素排出量削減の「気候変動緩和」において重視すべき概念だが、気候変動による影響を軽減する「気候変動適応」では、仮にパリ協定が未達だった場合にも備えられる体制を目指さなくてはならないはず。背景には、予算制約もあり、2℃前提でしか計画が組めないという懐事情が影響している可能性もある。2℃上昇を前提に計画を組むのであれば、気候変動緩和でも2℃未満を死守するぐらいの覚悟が、日本政府には必要となる。パリ協定後の各国コミットメントを積み上げても3℃以上上昇してしまう。
【参照ページ】気候変動を踏まえた治水計画へ転換
【参照ページ】気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会
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