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【日本】経団連、世界的な気候変動サステナブルファイナンス議論に反発。日本産業界の移行リスク上昇の可能性

 日本経済団体連合会(経団連)は9月4日、EUを中心に、気候変動に基軸を置く「サステナブルファイナンス」を推進し、気候変動緩和・適応の分野に資金を動員する動きがあることに、懸念と反対を表明した。特に、国連持続可能な開発目標(SDGs)の中でも気候変動緩和の観点を強く押し出す流れに対し、「サステナブル」は多面的に検討すべきと主張。政策主導で、投資促進対象分野を提示していくことに反発した。

 今回の経団連の主張は、世界的な気候変動の潮流に大きく抗うものとなっている。9月23日には、国連気候アクション・サミットが開催され、それに合わせて、各国政府、国際機関、企業、機関投資家、NGOが相次いで、気候変動に向けたアクションを打ち出し、とりわけ脱炭素に向けた脱化石燃料、再生可能エネルギー促進、廃棄物削減、省資源、省エネ等に向けた国際的な動きが鮮明になってきている。

 それに対し、経団連は、「化石燃料の利用に象徴される、特定の経済活動・技術・製品の利用を恣意的に排除するような議論」は「適切ではない」、「温室効果ガスの排出といった環境負荷は、個々のセクターで閉じるものではなく、製造、流通、使用、廃棄、リサイクルといったバリューチェーン全体での評価が重要である。例えば、製造時の環境負荷が多少高くても、製品使用時の環境負荷がそれ以上に低減されるような製品はサステナブルであり、逆に製品使用時の環境負荷が低くても、製造時や廃棄に伴う環境負荷がそれ以上に大きい製品はサステナブルとは言えない」と、国際的な動きに反発している。

 今回の主張をとりまとめたのは、経団連の環境安全委員会。同委員会の委員長は現在、原油・ガス大手JXTGホールディングスの杉森務社長と、石油化学大手旭化成の小堀秀毅社長が務める。原油・ガスや石油化学の業界は、脱化石燃料の動きが強まると大きく影響を受けやすい業界。また、バリューチェーン全体での環境負荷を考えるべきと経団連の中で強く主張してきたのは、二酸化炭素排出量が多いと批判されやすい鉄鋼業界。日本の鉄鋼メーカーは、製鉄過程では二酸化炭素排出量を多く出すが、鉄は再利用・リサイクル可能なため、気候変動に資する素材ということを以前から主張している。だが、海外では、鉄鋼業界でも低炭素・脱炭素の製鉄手法が模索される段階に入ってきており、日本の鉄鋼メーカーの気候変動面での評価は芳しくない。

 今回の経団連の声明の中で、多く使われている単語が「イノベーション」。声明の中では明言されていないが、日本が気候変動の分野で重要な「イノベーション」として規定しているのが、炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)技術や炭素回収・貯蔵(CCS)技術。低コストに実用化できれば、石炭火力発電所でも製鉄過程でも発生する二酸化炭素を「除去」できる可能性があり、日本の政財界はこの技術に賭けている。だが、国際的には、CCUSが低コストになるかについては懐疑的な向きも多く、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のレポートでも、CCUSだけに依存することは、低コスト化できなかった場合の気候変動緩和失敗リスクが大きいため危険視している。EUのサステナブルファイナンスのタクソノミー(定義)でも、CCS付石炭火力発電は排除された。それが、日本の産業界の考えとは大きく相容れなかった。

 経団連という形で日本の産業界は、国際的な潮流に反発する旗を掲げた。しかし、EUから始まったサステナブルファイナンスの動きは、国際的に高く評価され広がりつつある。日本の「旗」がグローバル規模で力強くなっていかなければ、反対に日本の産業界は今後、大きな気候変動の「移行リスク」を抱えていくことになる。

【参照ページ】サステナブル・ファイナンスをめぐる動向に対する課題認識

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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