国連責任投資原則(PRI)は8月14日、パッシブ運用型のESG投資戦略の概要と課題に関するディスカッションペーパーを公表。機関投資家やサービスプロバイダーからの意見募集を開始した。PRI署名機関でなくてもフィードバックできる。
同ペーパーでは、まずパッシブ運用とESG投資の双方への投資額が増えている事象を整理。パッシブ運用は、アクティブ投資に対する相対的便益の高さやコストの低さ、ETF(上場投資信託)の登場等で注目が集まっており。一方ESG投資は、リスク調整後リターンを向上させる証拠が増えてきたことや、ESGデータが利用しやすくなったことが追い風となっているとした。
また、直近10年では、アクティブ運用に対しパッシブ運用は右肩上がりで成長しており、2019年以降はアクティブ運用額を上回るという予測を示した。また、パッシブ運用でのESG投資では、ESG関連データが増えてきたものの、ESGインテグレーションよりも、スクリーニングのほうが一般的な手法となっていた。PRIが別途求める「アクティブオーナーシップ」についても、アクティブ運用と同様、パッシブ運用でもESG観点での議決権行使・エンゲージメントは実施可能と分析した。
一方、パッシブ運用でのESG投資の課題面では、企業情報の不足、評価機関間でのESGスコアのばらつき、時価総額加重平均型株価指数に比べポートフォリオ構成手法の煩雑さ、銘柄やセクターへの意図せざるエクスポージャー大、コストを挙げた。特にコストについては、パッシブ運用では、信託報酬を下げることた大きな競争要素をなっている中、運用コストが上がってしまうことに懸念が出た。
アクティブオーナーシップの課題では、運用資産総額(AUM)の大きい機関投資家ほど、分散投資の中で保有比率の小さい個別銘柄に対しエンゲージメントするメリットが薄い上に銘柄数が多くコストが嵩むため、他の投資家のエンゲージメントに「フリーライド」しようとする傾向が出ることや、個別銘柄に対する知見がアクティブ運用投資家より薄いことから、エンゲージメントの有効性が低いことが挙げられた。加えて、インデックスに依存することによるダイベストメントの難しさや、経営資源が限られることに起因する議決権行使の第三者へのアウトソース、法規制による集団的エンゲージメントの躊躇や、議決権行使のための貸株償還インセンティブの低さ等の課題も指摘された。
PRIは今後、今回集まった意見も踏まえ、パッシブ運用でのESG投資ガイダンスを策定する考え。
【参照ページ】How can a passive investor be a responsible investor?
【ディスカッションペーパー】How can a passive investor be a responsible investor?
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