国際人権NGOビジネスと人権リソースセンター(BHRRC)は8月6日、中国・新疆ウイグル自治区の強制収容所に拘束された少数民族が働く工場が、主要アパレル・ブランドに製品を納品しているとされる問題で、アパレル大手の回答を公表した。
今回の問題は2018年12月AP通信の調査に端を発している。同調査は、米スポーツブランドBadger Sportが、ウイグル人やカザフ人が強制労働を課されているとされるウイグル自治区の収容所に工場を敷設していることを明らかにした。国連は、同地区を大規模収容所のようだと形容し、100万人以上が刑務所ないし再教育キャンプに送検されたと見ている。AP通信の調査を受けて、翌2019年1月にBadger Sportは同地域のサプライヤーとの取引中止を発表した。
7月には米メディアFour Cornersが、独自調査に基づき、ウイグル地域から調達しているアパレル大手が他にあると発表した。名指しされた企業には、アディダス、コットンオン、エスプリ、Factory X、H&M、イケア、NIKE、Noni B、PVH(フィリップス・バン・ヒューゼン)、Wesfarmers、ウールワース、ファーストリテイリング、Glorious Sun(Jeanswest)、Just Group等がある。BHRRCは、当該ブランドに対し、少数民族の申し立てに対応するよう促す回答書を送付。Glorious SunとJust Group以外の各社は回答した。
アディダス
アディダスは、ベターコットンイニシアチブ(BCI)に準拠して調達を行っているため、今回問題視されているサプライヤーとの直接的な契約は無いと回答。強制労働に対する厳格な反対姿勢をサプライヤーやサブサプライヤーに示していることを強調した。一方で、今回問題視されているサプライヤーのHuafu社は、中国やベトナムにかけて広く工場を有していることにも言及。グローバルのアパレルブランドも間接的に同社の綿糸を利用している可能性があることも認めた。
それを受けアディダスは、同地域に工場があるサプライヤーからの調達を一時停止した。第三者調査機関による調査結果を改めて実施し、同社の認識に誤りがないかを確認するとしている。
コットンオン
コットンオンは強制労働を含む現代奴隷には一切容認しない姿勢を強調。サプライヤーと契約を交わす際にも、独自の規定への遵守を求めているとした。その上で同社は、今回の問題を受けて改めて独自調査を開始。もし、同社規定に反する問題が特定された場合には、サプライヤーに対して即座に是正に向けたアクションを取らせることを明示した。
エスプリ
エスプリは、今回の事態を重く受け止め、独自に調査を実施し、同社商品の一部に今回問題となっているHuafu社の綿糸が利用されていたことが明らかになったと回答した。それを受け、Huafu社との調達を中止。同社の行動規範に照らして容認できない旨をあらためて強調した。
Factory X
ILO基本条約に基づき独自に強制労働に関する方針作成しており、今回のような強制労働は容認できないと回答。また、同社のブランドDangerfieldは、コットンの7%をウイグル地域から調達しているが、工場の検査やサプライヤーへの同社方針への署名も求めているとした。
H&M
H&Mのバリューチェーン上のいずれにおいても、強制労働は容認できないことを示した上で、これまで長きに渡りBCIと協働し、持続可能な調達を行ってきたと回答。全サプライヤーが、同社のサステナビリティ・コミットメントおよび法令に遵守するよう徹底しており、強制労働リスクに対するデューデリジェンスも行ってきたことを強調。その上で。今回の問題の全容を把握するために、すべての生産工場を調査中であるとした。
イケア
イケアはBCIに準拠した綿糸調達を行っており、ウイグル地区に直接契約しているサプライヤーはないと回答。また同社の綿製品の15%を占める同地区の2次サプライヤーにおいても、今回のような問題は認められなかったことを明示。その上で同社のバリューチェーン上のいかなる強制労働も容認できないことを強調した。
NIKE
NIKEはウイグル地区に直接契約したサプライヤーが無く、同地域に接触のあったサプライヤーがいないかを調査していると回答。また、同社の厳格な要件として強制労働を禁じている点も強調した。
Noni B
Noni B社は倫理的調達ポリシーに即した調達を実施しており、サブサプライヤーを含むすべてのサプライヤーに同ポリシーへの遵守を求めていると回答した。さらに年次で追加の監査も実施していることも明示した。
PVH
PHV社は今回の事態を重く受け止め、同社のネットワークを活用して、合理的に可能な形でデューデリジェンスを実施すると回答。また、同社についても国際労働基準に即したコミットメントを掲げており、サプライヤーには同コミットメントへの準拠を求めていたとした。
Wesfarmers
Wesfarmers社は、ILOの基準に準拠した倫理的調達規範を持ち、サプライヤーは契約にあたり本規約を遵守する必要があるとした。さらに、サプライヤーの工場は第三者機関によって監査され、同規範に即しているかを確認していると回答。
一方で、今回の事件を受けて、改めて内部調査を行った結果、1つの直接サプライヤーが今回問題となったHuafu社の綿糸を利用していることが明らかになったという。状況については調査中としている。
ウールワース
ウールワースの一部門であるBig Wは、サプライチェーン上の公正かつ倫理的な労働環境の実現に真摯に取り組んでいることを強調。同社はウイグル地区に工場を持っておらず、サプライヤーへも何の苦情も上がっていないことを確認したが、サプライヤーが同地区のサブサプライヤーから綿糸を調達した可能性があることを明らかにした。現在さらなるデューデリジェンスに行う。現状、サプライチェーンの全体を可視化できていないことから、同社は今後12ヵ月かけて「責任調達プログラム」を実施し、変革に取り組む。
ファーストリテイリング
ファーストリテイリング社は、ウイグル地区にサプライヤーがいないと回答。その上で、同問題については調査を行うとした。
Glorious Sun (Jeanswest)
回答無し
Just Group
回答無し
【参考】China: Ethnic minorities detained in internment camps reportedly subject to forced labour in factories supplying to major apparel brands; Incl. co responses
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