IT世界大手米アルファベット傘下のAI開発子会社DeepMindは7月31日、米国退役軍人省と協働し、急性肝臓障害等の治療において、主な原因を予測する技術を開発したと発表した。将来的には発症の最大48時間前に、臨床医が患者の処置を始めることができるようになるという。急性肝臓障害は、英国で毎年10万人以上が罹患している。
英国と米国の病院では、入院患者5人に1人が急性肝臓障害というところもあるほど症例の多い疾患。医師が早期に処置することで、最大で30%もの症例を予防できると考えられているが、発見が非常に困難な上に、急速に悪化することもある。
同社は協働する米国退役軍人省のネットワークから匿名化された健康データを収集し、人工知能(AI)を活用。従来の診断と比べ最大で48時間早く患者の急性肝臓障害の発症を予測し、重症化した患者10人のうち9人を予測することにも成功している。
しかし、AIの予測も医師に届かなければ意味がない。従来、臨床医はポケットベルや紙、ファックスを用いてコミュニケーションをとってきたが、重要な情報を適切なタイミングで適切な専門家に届けるには、より良いツールが必要不可欠となる。
同社は臨床医の即時コミュニケーションを可能にするモバイルアプリ「Streams」を開発しており、英国の公営病院ネットワークの一つ「Royal Free London NHS Foundation Trust」で2017年より活用されている。Streamsには、アルゴリズムを活用して患者の容態悪化を臨床医に警告する等の機能が実装されており、本来は数時間を要する緊急事態を15分以内に対処し、症状の見落としも12.4%から3.3%に改善。急性肝臓障害患者の平均入院費用を17%削減するなど、大きな成果を上げた。さらに今後、今回開発したAIをStreamsにも搭載することを検討している。
【参照ページ】Using AI to give doctors a 48-hour head start on life-threatening illness
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