Global Change Biologyに掲載された論文「Older Forests Resist Change」によると、高齢の樹木が多い古い森林の方が、若い樹木で構成する森林より、炭素貯蓄、木材生産、生物多様性等の面で気候変動の影響を受けにくく、レジリエンスが高いという。特に、米北中西部からニューイングランドにかけての森林はレジリエンスが高く、五大湖の東部および南東部の森林は脆弱なのが顕著となっている。
この論文は、米バーモント大学ルーベンシュタイン自然環境学部のDominik Thom 研究員らが、米ミネソタ州からメイン州にかけて、および、カナダのマニトバ州からノバスコシア州にかけての18,500カ所に及ぶ森林の気候変動による影響を5年間にわたり調査し、分析したもの。
米国では、「古い森林」の定義を150年以上とする場合が多い。一方、林野庁によると、日本では林齢50年以上を「高齢級」としている。いずれにしても、古い森林の方が構造が複雑になっている。多様な高さの樹木で構成されており、林冠の差が大きく、光を取り込むスペースが広い。そのため、気温の上昇や降雨の増量、嵐等に対する感度が低く、また回復力が高い。このような条件が、多くの種が生存するのに適した環境を作り上げているのだという。
バーモンド州では気候が大きく変動しており、1960年から2014年までの年間平均気温が1.3F(0.75℃)上昇し、年間平均降雨量は5.9インチ(約150ミリ)増えている。Green Mountain Stateというニックネームで知られ、現在は全土の78%以上が森林地帯で、メープルシロップの生産量が全米一の同州。しかし、羊牧がピークに達していた1880年代には、多くが牧草地に転用され、森林面積が37%にまで減少した。この経験を踏まえ、バーモント大学等でも森林研究が推進されている。
今回の調査を行った研究者たちは、今後の気候変動対策として、状況によっては、枯木をそのまま放置することも必要だとしている。また、大木の周辺に広いスペースを設けることや、倒木の根および周辺の土を集めて土塁を作る等の手法に加え、古い森林の保全の強化や樹木の伐採サイクルの延長等を推奨。一方、新しい森林に対しては、人為的に古い森林のような状態を作り出すような管理方法も有効だと提言している。
【参照ページ】Older Forests Resist Change – Climate Change, That Is
【参照ページ】Study: Older forests less vulnerable to climate change
【参照ページ】Older forests resist climate change -- in New England
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