ノルウェー公的年金基金GPFGの運用を担うノルウェー銀行投資マネジメント部門(NBIM)は、国連責任投資原則(PRI)に対し、機関投資家の投資パフォーマンスを国連持続可能な開発目標(SDGs)へのインパクトで評価することに反対する意見書を提出した。GPFGは、運用資金総額約110兆円で、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に次ぐ存在感がある。またNBIMは、ESG投資に非常に積極的で、世界をリードする機関の一つだが、機関投資家のKPIはあくまで投資パフォーマンスであり、SDGsインパクトに寄りすぎた評価体系に警鐘を鳴らした。
今回の意見書は、現在PRIが実施している署名機関のレポーティングの見直しに対するパブリックコメントとして提出されたもの。今回の変更の方向性の一つには、署名機関に対しSDGsインパクトを報告させようという案も浮上している。
ESG投資の世界には、幅広くESGを考慮し投資パフォーマンスを向上させようとする動きと、たとえ投資パフォーマンスを犠牲にしても社会・環境へのインパクトを重視しようという動きの2つがあり、どちらを目指すかは各々の機関が役割やミッションに基づき決めている。宗教系年金基金等は、後者の性格が色濃いこともあるが、運用資産総額の大きい既存の年金基金や生命保険会社、また彼らから運用を委託される運用会社は、投資パフォーマンス向上のためにESG投資を実施していることが多い。
NBIMは今回、機関投資家として「アディショナリティ(additionality)」を生み出すことが理想だが、機関投資家の多くは必ずしもSDGsインパクトに対して責務を追っているわけではないとし、投資パフォーマンスの方が重要との考えを披露した。アディショナリティとは、あるアクションや投資等がなかった場合には得られなかったインパクトを生み出すことを指す概念。
一方PRIは、SDGsインパクトをレポーティングに加えようとした背景は、SDGsインパクトを至上命題にするというより、他の署名機関とインパクトの点で比較できるようにすることを念頭に置いている。但しNBIMの反応からは、国民から資産を預かる機関投資家として、SDGsインパクトを押し出しすぎることへの懸念がみえる。
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