国際協力銀行(JBIC)は4月19日、住友商事も出資するベトナムバンフォン・パワー・カンパニーとの間で、「バンフォン1石炭火力発電」事業に融資金額約11億9,900万米ドル(JBIC分)を限度とするプロジェクトファイナンスによる貸付契約を締結した。三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行、シンガポールOCBC(華僑銀行)、DBS、中国の中国銀行も協調融資し、協調融資総額は約19億9,800百万米ドル。民間金融機関の融資部分に対しては、経済産業省が管轄する日本貿易保険(NEXI)が債務保証保険を提供する。
同プロジェクトは、超臨界圧(SC)石炭火力発電所の建設で、設備容量は660MWを2基で、合計1,320MW。ベトナム国営電力公社(EVN)との間で25年間のPPA(電力購入契約)を結んでいる。
JBICは、今回のJBICによる融資決定は、日越首脳共同声明でのコミット案件であり、日本政府が2018年6月に改訂した「インフラシステム輸出戦略」に沿うものと強調するが、問題も多い。まず、日本政府は国内では、SCよりも二酸化炭素排出量が少ない超々臨界圧(USC)に限るという方針を発表しているものの、海外ではSCでも融資を決定している点。また、経済協力開発機構(OECD)のルールでは、500MW超の石炭火力発電所への支援を制限している。日本の環境NGOは、JBICが2月に融資検討を開始した際、これらを理由に融資しないよう求めていた。
また、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行の4行は、石炭火力発電に対する新規融資を禁止もしくは慎重に対応するとしているものの、今回の案件では融資を決めた。もちろん、案件検討はすでに数年前から動いており、セクター方針発表前から動いていた案件という言うこともできよう。但し、やはり方針を決めた以上、今回の融資についても説明すべきだが、各社沈黙したままだ。
今回協調融資に加わったシンガポール手OCBCは4月16日、現在進めるベトナムでのギソン2石炭火力発電所とバンフォン1石炭火力発電所建設を最後に、世界中で石炭火力発電への新規融資を禁止すると明確にした。DBSも4月18日、世界中で石炭火力発電へのファイナンスを禁止したと発表した。日本の大手銀行にも、対外的に真摯な姿勢が問われている。
総合商社でも、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅が石炭関連事業への新規投資に慎重になる中、住友商事が「SDGs経営」を謳いながら問題の多い石炭火力発電所を新設しにいく姿は理解に苦しむ。
【参考】【シンガポール】銀行大手OCBCとDBS、石炭火力発電への新規ファイナンス禁止発表(2019年4月19日)
【参照ページ】ベトナム社会主義共和国バンフォン1石炭火力発電事業に対するプロジェクトファイナンス
【参照ページ】【要請書提出】ベトナム・バンフォン1石炭火力発電事業からの 日本の公的支援撤退を求める要請書(2019/2/14)
【参考】【国際】石炭火力建設は世界的に大幅に縮小しつつも中国では増加。環境NGO52団体レポート(2019年4月1日)
【参考】【ベトナム】WRI、ベトナムの修正第7次電源開発計画を分析。石炭依存減を評価しつつも送電網に課題(2019年3月26日)
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