国際環境NGOの米ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)は4月16日、海洋保護に取り組む政府に対し利率の低い負債性資金を提供する新プログラム「Blue Bonds for Conservation(保護のためのブルーボンド)」を発表した。NGOが国債スキームを活用して政府に環境保護の金融インセンティブを提供するのは画期的なアイデア。
今回の仕組みでは、まず島嶼諸国や海に面した国々が自国の近海海域の30%以上を環境保護することにコミットした企業が対象となる。海域には、サンゴ礁、マングローブ林、希少種の生息地が含まれ、適切な漁業管理や汚染削減等の保護活動を同海域で実施することが求められる。条件を満たした企業に対し、TNCは負債性資本を国家政府に提供することで、国家は既発国債を償還し、TNCが提供する低金利で年限の長いファイナンスを得られる。またTNCは当該国に対し、海洋保護のための技術支援も提供する。
TNCは、今回のプログラムを最大で20カ国に提供する考えで、合計400万km2の海域保護を目論む。TNCは同様のスキームをすでに2016年にセイシェルに対し実施し、セイシェル政府は2020年までに30%の海域を保護することにコミットした。TNCは、今回のスキームのために、すでに2,300万米ドル(約26億円)の寄付を集めており、最終的に4,000万米ドル(約45億円)まで増やす見込み。さらに、世界銀行、民間投資家、沿岸諸国等からも資金を集めファンド全体で16億米ドル(約1,790億円)を用意する。TNCは、全体としては85カ国で導入する需要があると考えている。
【参考】【セイシェル】政府、世界初のブルーボンド国債約17億円発行。海洋保全と漁業経済開発を両立(2018年11月2日)
科学者の予想では、気候変動の影響で2050年までに世界のサンゴ礁の90%は死滅する。さらにマングローブ林が消失することで、生物多様性や周辺漁民にも生活の悪影響が出ている。ついにNGOが、金融の力で政府を動かし始めている。
一方、ブルーボンドという名称については、グリーンボンドの資金使途を海洋分野に当てることで「ブルーボンド」と呼称している債券はすでに登場しているが、今回のブルーボンドは必ずしも国際資本市場協会(ICMA)のガイドラインに準拠するわけではない。
【参照ページ】Blue Bonds: An Audacious Plan to Save the World’s Oceans
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