日本経済団体連合会(経団連)は4月8日、日本政府へのエネルギー政策提言書「日本を支える電力システムを再構築する」を発表した。政府が次期エネルギー基本計画の策定にあたり、2030年以降の電力システムの将来像を複線シナリオとして示し、企業が投資回収の可能性が見通せるようにすることを求めた。
発電分野については、再生可能エネルギーの主力電源化に向け、FIT制度を2020年度末までに抜本的に見直すべきと主張。自立化に向けて支援の対象を絞り込み、国民負担を軽減するとともに、引き続き制度的補助が必要な部分については、FIP制度(プレミアム価格買取制度)を採用することも一案とした。その上で、原子力発電については、二酸化炭素排出量の大幅削減に貢献できると言及し、既設発電所の再稼働やリプレース・新増設を真剣に推進すべきとした。
送配電分野では、大手電力会社が担う送配電事業者は、今後老朽化する送配電網の更新・次世代化にかかる設備投資と、再生可能エネルギーによる分散電源化により送配電需要の低下が見込めれるため、発電事業者からの送配電費用徴収を早く実現すべきとした。また、発電事業者からの徴収は、発電量(kWh)ベースではなく、設備容量(kW)ベースが望ましいとした。kWベースにすると、一般的に、水力、石炭火力、天然ガス火力、原子力が中心の大手発電事業者に有利となり、再生可能エネルギーを進める中小の独立系発電事業者(IPP)に対しては不利な制度設計となる。
エネルギーの将来像に関しては、首相官邸のパリ協定長期成長戦略懇談会が4月2日に提言をまとめており、懇談会には経団連も委員として参加した。その後すぐに経団連が単独で提言書をまとめたことはには、狙いがあると考えられる。今回の提言では、再生可能エネルギーの推進、低炭素化を謳ってはいるが、中身を俯瞰すると、国民負担を引き下げるための再生可能エネルギー助成の縮小、送配電を担う大手発電事業者へ財政援助するための再生可能エネルギー発電事業者への傾斜課金、原子力発電の再稼働・新設となっているようにみえる。
中西宏明・経団連会長も会見の中で、電力自由化の効用に懐疑的な見方を示した。再生可能エネルギーにしても、「拡大に取り組み、ある程度の量を増やすことができたが、これ以上の拡大は難しい」と述べた。
【参照ページ】日本を支える電力システムを再構築する
【参照ページ】提言「日本を支える電力システムを再構築する」公表記者会見における中西会長発言要旨
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