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【日本】官邸のパリ協定長期成長戦略懇談会、提言発表。2070年までにCO2ゼロ目指す

 首相官邸のパリ協定長期成長戦略懇談会は4月2日、提言をまとめ発表した。2050年までに二酸化炭素排出量を80%削減(基準年は未定)しつつ、さらに気温上昇を1.5℃未満に抑える努力目標も設定した。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の1.5℃特別報告書によると、1.5℃目標を達成するには2070年までに世界中の二酸化炭素ネット排出量をゼロにしなければならず、この目標を提言した。

 同懇談会は、首相が主催し、事務局は内閣官房、外務省、経済産業省、環境省が務めた。委員には、日本経済団体連合会会長、新日鐵住金(現・日本製鉄)社長、トヨタ自動車社長、東京海上ホールディングス会長等の民間委員として就いた。

 2070年までの二酸化炭素ネット排出量ゼロに向けては、産業界が「掛ける」技術分野を大幅に盛り込んだ。具体的には、水素、炭素回収・貯蔵(CCS)・CCU(炭素回収・利用)、原子力発電を大きく掲げた。石炭火力発電については、「依存度を可能な限り引き下げる」としたが、本音はCCS・CCUを活用し、炭素回収を図ることで存続を図りたい考えに見える。また水素についても、「石炭から水素を生成する技術」とあり、石炭の中でも二酸化炭素排出量の多い「褐炭」を諦めず、ここでもCCS・CCUを突破口とする。そのため、CCUの最初の商用化技術を数年内に確立し、CCS・CCUを2030年までに実用化し世界への輸出を目指すとした。但し、CCSについては、ドイツが採用しない決定をしたことにも触れ、一定の牽制も見せた。

 再生可能エネルギーについては、コスト削減と送配電網、バッテリーや水素を用いた蓄電技術の開発が必要と指摘。洋上風力発電については言及しなかった。原子力発電は、「安全確保」をするとし、諦めない姿勢を貫いた。

 エネルギー以外では、二酸化炭素排出量ゼロの製鉄や、経済産業省の自動車新時代戦略会議がまとめた「Well-to-Wheel Zero Emission」を確認した。Well-to-Wheel Zero Emissionは、⽇本⾞1台当たりの二酸化炭素排出量を2050年までに80%削減(乗用車では90%削減)する目標。鉄鋼業界が反対しているカーボンプライシングについては、「議論が必要」にとどめた。

 金融分野では、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)ガイドラインに基づく報告を企業に促していくとした。懇談会の議長は、国際協力機構(JICA)理事長が務めており、環境性能の高い技術・製品を海外に展開していくことも盛り込み、経協インフラ会議の方針を踏襲した。

[2019.4.19追記]
 共同通信が入手した内部文書によると、当初の座長文案は、石炭火力発電の「長期的な全廃」を明記したが、日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明・会長、日本製鉄の進藤孝生・会長、トヨタ自動車の内山田竹志・会長の三委員から意見書が出、「依存度を低下していく姿勢」に修正されたという。

 また、座長文案では、「石炭火力発電に公的資金は投入しない」という選択肢も挙げたが、産業界からの委員の意見を踏まえ、「パリ協定の長期目標と整合的に排出削減に貢献する目的で、支援を行う」という無意味な文言となった。

 さらに、最終決定文書では、政策の方向性として、「『世界のエネルギーアクセス改善と温暖化対策という二つの課題の両立のためカーボンリサイクルを推進し、世界に貢献する』、と発信すべき」という文言も、石炭火力発電は必要であり、CCUSとのセットで考えるべきとの産業界の意見を汲んだものだった。

【参照ページ】パリ協定長期成長戦略懇談会(第5回)

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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