環境省は3月28日、日本の発電における気候変動対策の2018年度の進捗状況を評価した結果を公表した。経済産業省と2016年に手打ちにした電力業界の自主規制に関しては「実効性の観点において万全とは言い難い」と言明。原田義昭・環境相は同日、今後大型の石炭火力発電所新設時の環境アセスメントでは、二酸化炭素排出量削減の道筋が示されないものには中止を求める方針を明確にした。
2016年、気候変動対策を進めたい環境省と、石炭火力発電を推進したい経済産業省は対立。大臣間折衝までもつれ込み、2030年までの二酸化炭素の排出係数の目標を0.37kg/kWhに設定し、電力業界には達成に向けた自主努力を期待することで合意。環境省は、ひとまず石炭火力発電に対する急進的な要求を引き下げつつも、毎年度進捗状況をチェックし公表することで牽制を図ることとなった。
今回発表された2018年度の評価では、2019年1月31日に公表された2017年度の排出係数は0.496kg/kWhで、前年度の0.516kg/kWhから多少減少したものの、目標値には程遠く「実効性の観点において万全とは言い難い」と判断。また、省エネ法では、石炭火力発電の新設は最新鋭のUSC(超々臨界)相当の発電効率、ガス火力発電でも最新鋭の発電効率を求めるとともに、2030年度の発電事業者毎の火力発電の全体平均発電効率を44.3%以上とするよう定めているが、現状について環境省は「既設の非効率な石炭火力発電に対する措置は十分とは言えない」「発電効率の指標の達成に向けた複数事業者による共同実施の考え方についても、未だ結論が得られていない」と断罪した。エネルギー供給構造高度化法に基づく再生可能エネルギー促進でも、「目標の達成状況は良好とは評価し難い」と厳しく指摘した。
発電所新設の許認可判断は、経済産業相にあり、環境アセスメント時に環境相が発する文書には法的な効力はなく、発電事業者と経済産業相に対する忠告の意味合いしかない。しかし今回原田・環境相は、従来の「事業の再検討も求める」ではなく、明確に「中止を求める」という表現を用いていくことに言及し、経済産業相に対する牽制を強める意気込みを見せた。
2016年に0.37kg/kWhで経済産業省が合意した際には、まだ原子力発電を再稼働すれば達成できるだろうという観測が同省にはあった。しかしその後、地元の支持がなかなか得られず、政権内や与党内でも意見がまとまらないことから再稼働は延び延びになり、達成が危うくなっているのが実態。炭素回収・貯蔵(CCS)や炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)にも熱視線を送るが、商業ベースには乗っていないまま2030年が近づいてきている。経済産業省はそろそろ、原子力発電所再稼働に固執するのか、再生可能エネルギー推進に全面的にかじを切るのか、腹を決めなければいけなくなってきている。
【参照ページ】電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価の結果について
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