英ビジネス・エネルギー・産業戦略省は3月11日、EU離脱の中で「合意なき離脱」シナリオを想定し、離脱後の気候変動関連制度への影響を発表した。英国政府が掲げる気候変動対応コミットメントには変わりがないが、英国企業はEUから離脱することでEU排出量取引制度(EU-ETS)が活用できなくなる。同時に、現在EU法の下で、電力会社と航空会社はEU ETS制度のもとで二酸化炭素排出量のキャップを嵌められているが、これもなくなる。
英国政府は、EU-ETS制度から外れた後の二酸化炭素排出量削減のため、EU-ETS制度の対象となっていた電力会社と航空会社に対しては「算定・報告・検証(MRV)」を続け、排出量の報告制度は維持する考え。さらに電力会社に対しては、4月1日から炭素税を導入するとした。1月から3月までの排出分については遡及して炭素税をかけることはしない。一方、航空会社に対しては、炭素税は課税せず、MRVのみを実施するとした。長期的には、EU-ETS制度への再復帰や、個別のUK-ETS制度の構築、または包括的な炭素税の導入等のオプションを検討する。これらの導入前にはパブリックコメントを募集する。
炭素固定・貯蔵(CCS)も、EU-ETS制度と間接的に制度が連関しているため影響を受ける。「合意なき離脱」時には、EU法に基づいて付与されていた炭素貯蔵ライセンスが無効となる。但し、英国の石油・ガス当局がライセンスを付与していたエリアについては、英国法に基づきライセンスの効力を維持する。それ以外のエリアでは、ライセンス付与の当局を新たに指定する予定。
京都議定書の市場メカニズムについては、EU登記簿へのアクセスができなくなる。独立した英国登記簿の創設を急ぐ考えだが、それまでの期間は、クリーン開発メカニズム(CDM)により発行される認証排出削減量(CER)と共同実施(JI)プロジェクトにより発生する排出削減量(ERU)を取引するためにEU登記簿にアカウントを設定した企業・団体は、海外の第3国でアカウントを設置し、当面そちらで管理することを勧めた。
【参照ページ】Meeting climate change requirements if there’s no Brexit deal
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