公益社団法人日本経済研究センターは3月7日、福島第一原子力発電事故の2050年までの処理費用が、前回2017年3月に試算した約70兆円から大幅に膨らみ、最大81兆円となると発表した。経済産業省も2016年に処理費用を試算し、約22兆円としたが、遥かに増える見通しとなってきた。同センターは、政府や電力業界に対し、原発を維持する理由の説明が足りないと批判した。
日本経済研究センターは、1963年設立。約340の企業・団体を会員とするシンクタンクで、短期経済予測をはじめ、経済構造も含めた中長期の経済予測、アジア経済予測、内外の経済問題に関する調査研究、政策提言を行っている。
81兆円の内訳は、廃炉・汚染水処理が51兆円(経産省試算は8兆円)、被災者への賠償が10兆円(同8兆円)、除染が20兆円(同6兆円)。汚染水管理については、関係者ヒアリングから、年間1,000億円以上かかることがわかり、1年間にかかる費用を1,500億円と仮定。費用が大きくかさんだ。
そのため、汚染水を海洋放出するオプションを取れば41兆円に抑えられ、加えて、新たに溶け出した核燃料デブリを取り出さず、廃炉を当面見送る「閉じ込め・管理」にすれば処理費用は35兆円程度にとどまる。但し、海水放出には漁業関係者への説明や補償が別途必要となり、廃炉を見送る場合は、帰宅困難地区の土地買い上げを伴うため、地権者等への賠償が必要となる。また35兆円には、「半永久管理の費用」は含まれておらず、実際には費用は増えるという。
汚染水の海洋放出については、原子力規制委員会はすでに、ストロンチウムなどの放射性物質を除去しトリチウムのみが残る汚染水は、海洋放出してもよいとしている。しかしこの現状ですら、漁業関係者からの理解は全く得られていないと述べた。
同センターは、「経産省や電力業界は、原発は政策コストを入れても安価な電源と主張してきた」と言ってきたが、前回2017年のレポートで「原発建設には100万kW級1基で1兆円かかり、安価な電源とは言えないと指摘」してきた。また、「エネルギー安全保障や地球温暖化対策に必要ともされるが、技術進歩が速い省エネルギーや再生可能エネルギーとの将来的な予測も含めた費用対効果比較などもなされていない」と批判。太陽光や風力を重視すべきとの考えを示した。
【参照ページ】事故処理費用、40年間に35兆~80兆円に
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