年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2月28日、委託先運用会社のスチュワードシップ活動をまとめた「2018年スチュワードシップ活動報告」を発表した。株式運用会社については、投資におけるESGインテグレーションや投資先へのエンゲージメント等で全体的なレベルは上がっているが、その取組のスピードや対応にばらつきが出てきている。債券については、日系、外資系ともにスチュワードシップ活動の幅を拡げている機関が増えていた。
GPIFは、委託先運用会社の選定に関する評価を、定量的な実績を勘案した定性評価で行っている。その中で、ESGインテグレーションやエンゲージメント・議決権行使に関する「スチュワードシップ責任」が評価全体に占める割合を2017年以降は引き上げ、日本株パッシブ運用機関では以前の15%から2倍の30%に、外国株パッシブ運用機関では以前の5%から6倍の30%にした。アクティブ運用機関でも10%を占める。GPIFはそれぞれ、パッシブ運用は市場の底上げに資するか、アクティブ運用は投資先の長期的な株主価値増大に資するかという観点で評価している。
スチュワードシップ責任には、投資でのESGインテグレーションやエンゲージメント・議決権行使の他、日本版スチュワードシップ・コードの受け入れや国連責任投資原則(PRI)への署名、ガバナンスや利益相反管理等の体制面等もチェックされる。そのため、GPIFから選ばれるためには、運用会社はスチュワードシップ責任を強化する必要が出てきている。
2017年6月からは、GPIFの「スチュワードシップ活動原則」を制定し、運用会社に対してESGの考慮を求めることを明文化し、重大なESG課題については積極的にエンゲージメントを行うことを求めている。重大なESG課題に関する認識では、全ての運用会社が共通して挙げたものがいくつかあった。国内株パッシブ運用会社は「気候変動」「サプライチェーン」「不祥事」、国内株アクティブ運用会社では「取締役会構成・評価」が。また外国株パッシブ運用会社では「気候変動」「ダイバーシティ」「水資源・水使用」「その他(社会)」が、外国株アクティブ運用機関では「気候変動」が挙がった。
GPIFは目下、運用会社に長期志向運用を進展させるため、運用会社の経営幹部の報酬体系調査を実施中。調査報告を踏まえ、運用会社の選定、評価に反映させる考え。また、2019年の検討テーマの一つに、運用会社に対するアセットオーナーによる共同エンゲージメントも検討するとした。
【参照ページ】2018年スチュワードシップ活動報告
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