長期志向経営推進イニシアチブの米FCLTGlobalは2月25日、企業と投資家双方にとっての長期的成功のためのロードマップを発表した。FCLTGlobalは、米戦略コンサルティング大手マッキンゼーや、資産運用世界最大手米ブラックロック、グローバル企業ダウ・ケミカル等がコアメンバーとして活動するNGO。約1年前には四半期決算の廃止を提唱するレポートを発表。今回は、企業が投資家に向け開示し双方が対話すべき内容をまとめた。
【参考】【国際】FCLTGlobal「四半期業績予想は企業価値向上やボラティリティ低減に寄与せず廃止すべき」(2017年11月6日)
FCLTGlobalは、マッキンゼーとカナダ年金計画投資運用委員会が2013年に立ち上げた「FCLT」を前身とし、2016年7月にブラックロック、ダウ・ケミカル、タタ・サンズが加わり「FCLTGlobal」として新たに発足した。今では、HSBC、バークレイズ、ユニリーバ、AT&T、BP、シスコシステムズ、DSM、グラクソ・スミスクライン、グレンコア、ブルームバーグ、米ワシントン州投資運用委員会、シンガポール政府系ファンドGIC Private、中国Hillhouse Capital Group、米ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、米ウエリントン・マネージメント、米ニュバーガー・バーマン、英シュローダー、仏ナティクシス、香港金融管理局、ナスダック、MSCI等もメンバーとして参加している。
FCLTGlobalは、長期経営や長期志向投資の推進や障壁撤廃アドボカシー活動に重きを置いている。今回は、短期投資家やメディアではなく、企業が掲げる長期的価値設定とその実現に向け、企業と投資家双方が取り組むべきロードマップを提示した。時間軸としては、3年後から5年後もしくはそれ以上先の目標を示すべきとし、その状況を1年周期以上のスパンで投資家はチェックすべきとした。そこでは4半期でのチェックは否定されている。企業の間では、長期投資家だけでなく短期投資家も意識せざるを得ないという声もあるが、今回の発表では、長期投資家向けのIRに力点を置くべきとの考えを鮮明にした。
その上で、企業と投資家が対話すべき10の項目を挙げた。
- 存在理由:企業の「目的(存在意義)」「ミッション」「ビジョン」の明確な宣言
- 成長のためのコアドライバー:ビジネスモデルがどう長期価値を創造するか
- 市場の見方:経営陣はマーケットをどう見ているか
- 競合優位性:ユニークな強みやアセット
- 長期目標:成長コアドライバーと結びつく3年から5年後の戦略目標
- 戦略計画:長期目標を実現するための短期・中期・長期の具体的な戦略
- 資本配分の優先順位:資金投下がどう長期価値を生むかとその財源
- KPI:戦略計画の進捗を測るための中期・長期の指標と測定結果
- リスク:リスクの概要と低減計画
- 報酬:取締役と経営陣の報酬がどのように長期価値創造と連動しているか
全てのスタート地点となるのは、企業の「存在理由」。曖昧な企業ミッションや抽象的なビジョンを掲げている企業は、まずその修正から取り組む必要がある。
【参照ページ】Release: FCLTGlobal publishes list of key elements for long-term corporate planning
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