米株主アドボカシーNGOのAs You Sowは2月21日、S&P500企業のCEO報酬状況に関する調査結果を発表した。As You Sowは、5年前からCEOの「報酬高すぎ」問題に着目しており、CEO報酬と従業員給与中間値の差や、機関投資家の「SAY ON PAY(株主が役員報酬に積極的に関与すること)」の状況について毎年報告書を出している。
米国では、2010年7月に制定された「ドッド=フランク・ウォール街改革及び消費者保護法(ドッド=フランク法)」で、役員報酬に対する株主権限を強化した「SAY ON PAY」が世界に先駆けて法制化された。しかし実際には、CEO報酬は上がり続けており、S&P500のCEO報酬平均は2013年の1,150万米ドルから2017年には1,360万米ドルにまで上がった。ストックオプション報酬まで含めると、時価総額上位350社のCEO報酬平均は1,890万米ドルとの報告もある。但し、トランプ政権が打ち出した「2017年税制改革法」では、税制上損金となる役員報酬額について100万米ドルの上限が設定されたことが、今後CEO報酬上昇の歯止めになるのではとの見方もある。
今回As You Sowは、CEO報酬と従業員給与中間値の差等をもとに、「CEOの報酬高すぎ」企業ランキング・トップ100を発表。上位10社は上から、フリートコア・テクノロジーズ、オラクル、ブロードコム、モンデリーズ・インターナショナル、ウィン・リゾーツ、ウォルト・ディズニー、トランスダイムグループ、アメリカン・インターナショナル・グループ、マテル、CSX。
また、米国では、ドッド=フランク法により株主総会で役員報酬を決議することが義務化され、2018年には上場企業に対し役員報酬と一般社員の給与格差を開示することも義務化もされた。その影響もあり、主要機関投資家が株主総会で役員報酬決議に「NO」を投票することが増えてきている。今回の調査では、運用資産総額が900億米ドル以上の機関投資家のうち、S&P500企業のCEO報酬に「NO」を投票した割合が40%以上の機関も公表した。アルファベット順に、Achmea、アリアンツ・グローバル・インベスターズ、APG、Aviva Investors、BMOグローバル・アセットマネジメント、カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)、フロリダ州年金運用理事会、HSBCグローバル・アセットマネジメント、リーガル&ゼネラル・インベストメント・マネジメント、ミネソタ州投資理事会、MN、MNインベストメント・パートナーズ、ノルデア・インベストメント・マネジメント、ナティクシス、PGGM、Robeco/RobecoSAM、ロイヤル・ロンドン・アセットマネジメント、Swedbank Robur、ユニオン・インベストメント。
一方、大手運用会社でもブラックロック、バンガード、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは、CEO報酬決議に「NO」を言わないことが多い。これらを除くと、大手の中でも「NO」を突きつける割合は大きく増える。今後3社が、積極化すれば、より大きな影響力を及ぼす。
【参考】【アメリカ】上場企業の役員と従業員の給与格差開示義務が開始。初年度情報開示に注目集まる(2018年3月4日)
【参照ページ】100 Most Overpaid CEOs Report Shows Sharp Increase in Shareholder Opposition by Many Large Funds
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