東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は1月18日、「持続可能性に配慮した木材の調達基準(木材調達基準)」を改定し、「持続可能性に配慮した調達コード(第3版)」を発行した。2019年3月1日以降の調達案件に適用される。しかし、既に契約済みのものを含め、2019年2月28日までに発注手続きが開始された案件には、同改定を遡及適用しない。
今回の変更点は2つ。1つ目は、森林減少に由来する木材の使用抑制の観点から、森林の農地等への転換に由来する木材でないことを追加。2つ目は、製造事業者等に係る情報を収集し、持続可能性に関するリスクをさらに低減するための追加的な対応を推奨した。
これに対し、国際環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)等は1月30日、改定された基準では東京五輪のサプライチェーンで繰り返し確認されている熱帯林破壊や人権侵害に関係した木材利用を止めることができないとし、遺憾の意を表した。「このままでは、有意義なデューデリジェンスをすることなく、問題のある企業からのリスクの高い木材をサプライヤー企業が利用し続けることが可能となり、2020年東京五輪は『苦いレガシー』を日本に残してしまう」と強い懸念を示した。RANは、2018年11月にも、同組織委員会が示した基準改定案について欠陥を指摘し、提言していた。
【参考】【日本】RAN、東京2020五輪組織員会の木材調達基準改定案が不十分と批判。「抜け穴」指摘(2018年11月29日)
RANともに、改定コードを批判したのは、国際環境NGO FoE Japan、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、ブルーノマンサー基金、ウータン・森と生活を考える会、国際NGO EIA(環境調査エージェンシー)、サラワク・ダヤック・イバン協会(SADIA)、Tukインドネシア(トゥック)、Walhi 北マルク支部(ワルヒ:インドネシア環境フォーラム)、サラワク・キャンペーン委員会(SCC)。
同NGOらは、今回の批判について2つの理由を説明した。まず、「改定基準では森林の農地等への転換など他の用途のために皆伐された木材に由来する製品、いわゆる「転換材」を明確に排除しており、サプライヤー企業に対して供給する木材を伐採地の森林まで追跡し、基準に合致しない木材を生産する企業からの調達リスクを評価し、軽減することが推奨されています。こうした追加は改善に見えますが、既存の基準を普通に解釈すれば、すでに転換材の調達は除外されている」と改善効果は期待できないことを挙げた。またサプライヤー企業のデューデリジェンスに関する規定は推奨レベルにとどまっている。
次に、改定基準には以下のような問題が残っているとし、「持続可能性や権利に関する規定を満たしていない合板の利用を可能としている重大な『抜け穴』が維持されていること」「問題のある木材を避けるために不可欠な有意義なデューデリジェンスを義務にしていないこと」「サプライヤーに対して、木材伐採によって影響を受ける地域住民から『自由意思による事前の十分な情報に基づく同意(FPIC)』を得ることを要求していない」「認証材のサプライチェーン内に持続不可能な木材が含まれる明確な証拠があったとしても、追加的なデューデリジェンスをすることなく認証材については全て持続可能であると想定していること」の4つの不備を挙げた。
他にも、東京五輪自らが目指していたPDCAサイクルが実施せれていないことも問題とした。
これらをもとに、RAN等は、同組織委員会に以下の3つを要求した。
- これまで調達された全ての熱帯材について、どのように持続可能性や合法性が確保されたのかについて詳細な評価の情報開示を即座に行うべき
- 伐採地までの完全な追跡可能性を確立していない場合や、木材調達基準の合法性、持続可能性、権利に関する5つの基準とFPIC取得について第三者監査で確認されていない場合、大会施設の建設に熱帯地域や他の高リスク地域からの木材製品の利用を全て停止すべき
- 特にリスクの高い木材について、東京五輪のサプライチェーン全体を通じての合法性と持続可能性の確保において、改定された調達基準がどのような効果があるのか詳細な説明を公表し、木材伐採によって影響を受ける地域住民が利用可能な言語で全ての情報公開を実施すべき
【参照ページ】持続可能性に配慮した調達コードの改定について
【参照ページ】NGO共同声明:2020東京五輪の木材調達基準改定は不十分(2019/1/30)
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