監査法人大手KPMGは、2016年の英小売大手BHS破綻、2018年の建設大手カリリオン破綻の影響を受け、英国で会計監査を引き受けているFTSE350企業に対し、コンサルティング等の非監査業務の提供を停止する方針を発表した。英メディアSkyが、KPMG英法人のビル・マイケル会長同社パートナーに配信したレターを入手し、11月8日明らかになった。利益相反の批判も出ていた監査法人による非監査法人停止の発表は、4大監査法人グループ(ビッグ4)ではKPMGが初。
今回の方針転換の背景には、英国で巨大企業の経営破綻が相次ぎ、監査法人が的確に監査業務を遂行していなかったことに対する政府及び社会の批判が強まっていることがある。特に、カリリオンが約16億ポンド(2440億円)の負債を抱えて経営破綻した案件では、銀行、投資家、サプライヤーが大きな損失を被り、同社に建設工事を発注していた政府にも経済的損失が生じた。
監査法人の責任を重く見た英財務報告評議会(FRC)は6月18日、監査法人の業務評価を行った「監査クオリティーレビュー」を公表。対象とした監査法人8社のうち、KPMGが突出して低い評価を受けた。同社がFTSE350企業の2017年度決算を担当した監査を調査したところ、問題がなかったのはわずか50%。前年の65%よりもさらに下がった。FRCは、KMPGの監査はクライアントの経営陣に対し問題や異議を十分に提起せず、監査執行にも一貫性を欠くと強く批判し、「受け入れ不可能」とまでコメントされてしまっていた。
FRCは、KPMGに315万ポンド(約4.7億円)の罰金を、PwCにも650万ポンド(約9.4億)の罰金を科した。同様に他のビッグ4であるデロイト、EY、PwCも「問題なし」の比率が下がり、一方、他の準大手4社は「問題なし」の比率が上がっていた。
KPMGは現在、FTSE350企業のうち90社の監査を担当している。今回、その90社全てで監査業務との関連性の薄い非監査業務から退く。KPMGは破綻したカリリオンに対して、監査業務で年間150万ポンド(約2.2億円)、非監査業務でそれ以上の数百万ポンドを稼いでいた。
【参考ページ】Accounting scandals prompt KPMG ban on non-audit work
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