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【カンボジア】首相、労働組合相手の刑事訴追を全て取り下げ。EU経済制裁方針と大手企業協議の成果

 カンボジアのフン・セン首相は11月7日、労働相と司法相に対し、労働組合リーダーを相手取り起こした刑事訴訟を取り下げるよう指示し、労働権や結社の自由を尊重する方針へ転換する姿勢を見せた。EUやアパレルメーカー大手から、カンボジアの労働法制に関する否定的な見解が相次いだことが背景にあると見られている。

 カンボジアは、劣悪な労働環境を強いられている労働者が多いと指摘されている。オーストラリア人権NGOのWalk Free Foundationが発表している「Global Slavery Index(GSI)」でも、カンボジアは現代奴隷数が多い世界トップ10に入る。とりわけ、カンボジアのGDPの約40%を占めるアパレル関連企業で懸念が広がってきている。国際労働NGOのGlobal Labor Justice(GLJ)、Asia Floor Wage Alliance、カンボジア労働NGOのCENTRAL Cambodia等も5月、カンボジアで労働者のセクシャルハラスメント被害が深刻とのレポートも報じた。

【参考】【国際】日本はサプライチェーンでの現代奴隷関与度が世界第2位。GSI 2018レポート発表(2018年7月25日)
【参考】【国際】労働NGO、H&M、GAP、ウォルマートの3社のサプライヤー工場でのセクハラ暴力を公表(2018年6月28日)

 懸念が広がる中、アメリカン・アパレル・フットウェア協会(AAFA)と米国ワシントン州に本部を置く公正労働協会(FLA)は10月19日、アディダス、ニューバランス、NIKE、プーマ、アンダーアーマー、VFコーポレーション等のアパレル大手を引き連れ、カンボジア政府との協議を実施。現状への懸念と政府の労働政策の転換を要請した。特に、カンボジア政府が2016年に導入した「労働組合法(TUL)」と関連法令により、カンボジアの労働者が労働組合を形成することを妨げる規定があることを強く問題視。独立した紛争解決機関として、資金的にも独立性が高く手続きも透明化した「仲裁会議」の復活を求めていた。AAFAとFLAは、その後10月22日、世界中のサプライチェーン上での責任ある雇用に関する宣言「AAFA/FLA Apparel & Footwear Industry Commitment to Responsible Recruitment」を発表し、大手123社が署名。その後、AAFAとFLAはカンボジア労働省に対し、労働権や結社の自由の尊重を求める共同書簡も送った。

【参考】【国際】アパレル業界123社、サプライチェーン上で強制労働撲滅にコミット。AAFAとFLA策定(2018年10月28日)

 同じくEUも10月、事態の改善に乗り出す。EUは、後発途上国(LCD)に対し、武器以外の全品目で数量制限なしにEU域内への輸出関税を撤廃する「EBA制度」を導入しており、東南アジアではカンボジア、ラオス、ミャンマーが、その他バングラデシュ、ネパール、ブータン、アフガニスタンやアフリカ諸国等が対象となっている。しかし、EUはカンボジアの労働法制に懸念があるとし、EBA制度の適用を停止する経済制裁に向け6ヶ月の審査手続きを公式に開始した。これにより、カンボジアで生産を行っているアパレルや食品メーカーには経済的打撃の可能性が見えてきていた。

 今回のフン・セン首相の発表により、同国の労働法制下で刑事訴追された労働組合関係者への裁判が全て取り下げされることとなる。フン・セン首相は、EUのEBA制度停止手続きとの関連性についていは明言してはいない。同時にフン・セン首相は、労働問題に対する市民運動が活発化している事態に対処するためのタスクフォース設立もあわせて発表。労働組合やNGO等は、国際的な圧力により政府が政策を転じてきたと歓迎している。

【参照ページ】Leading Apparel and Footwear Brands Meet with Cambodian Government to Express Concerns About Worker Rights
【参照ページ】Labour Ministry receives counsel on labour rights

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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