米経営学誌のハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)は10月、2018年度の「世界のCEOベスト100(The Best-Performing CEOs in the World)」を発表した。同ランキングは、在任期間中の株主総利回り(TSR)および時価総額の増加という視点から、世界で最も優れた財務パフォーマンスを上げているCEOを格付するものだが、昨年からは新たに企業のESG(環境・社会・ガバナンス)指標も要素として採用されている。構成比は、財務パフォーマンスが80%、ESG指標が20%。
【参考】ハーバード・ビジネス・レビュー、「世界のCEOベスト100」の選定基準にESGを追加
さらにESG指標の評価については、今年からESGデータ提供会社であるサステナリティクス(Sustainalytics)とCSRHubの2社のデータを採用し、それぞれの会社保有データについて10%ずつが配分されている。理由についてはHBRは、企業の業績を評価する上でのESGの重要性を認識しつつも、その測定方向については主観的な側面もあり、調査機関によっては同一企業のパフォーマンスの評価に相当な差異が生じていることに注目しているからだとしている。
2018度のCEOベスト15は、
- インディテックス Pablo Isla(アパレル)(スペイン)
- NVIDIA Jensen Huang(IT)(米国)
- LVMH Bernard Arnault(アパレル)(フランス)
- ケリング François-Henri Pinault(アパレル)(フランス)
- コンチネンタル Elmar Degenhar(自動車部品)(ドイツ)
- セールスフォース・ドットコム Marc Benioff(IT)(米国)
- ヴァレオ Jacques Aschenbroich(自動車部品)(フランス)
- KBC Johan Thijs(金融)(ベルギー)
- シスメックス 家次恒(IT)(日本)
- ブイグ Martin Bouygues(建設)(フランス)
- ノースロップ・グラマン Wes Bush(製造業)(米国)
- ADOBE Shantanu Narayen(IT)(米国)
- ダッソー・システムズ Bernard Charles(IT)(フランス)
- NIKE Mark Parker(アパレル)(米国)
- エドワーズライフサイエンス(医療機器)(米国)
昨年の上位15位までのCEOのうち、10人が2年連続で今年も15位以内に入った。今年の首位は、アパレル・ブランド「ZARA」を展開するスペイン・インディテックスのPablo Isla CEOで2年連続で1位。財務パフォーマンスは29位だが、ESGスコアが手堅く総合1位を獲得した。2年連続15位入りしたのは、NVIDIA、LVMH、コンチネンタル、セールスフォース・ドットコム、ヴァレオ、KBC、ブイグ、ダッソー・システムズ、NIKE。また今年のトップ100のうち70人は昨年もトップ100入りしていた。
今年の財務パフォーマンス首位と2位は、昨年と同様、米アマゾンのジェフ・ベゾスCEOと中国テンセントの馬化騰CEO。しかし、総合スコアはいずれもESGスコアが足を引っ張り、総合ランキングは、アマゾン68位、テンセント50位だった。その他、財務パフォーマンス上位組は、3位ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEOが総合ランキング83位、4位NVIDIAのジェン・スン・ファンCEOが総合ランキング2位、5位ブラックロックのローレンス・フィンクCEOが総合ランキング34位、6位アクティビジョン・ブリザードのロバート・A・コティックCEOが78位、7位LVMHのベルナール・アルノーCEOが総合ランキング3位だった。
日本のCEOは、昨年18位だったシスメックスの家次恒会長兼社長が9位と健闘。財務パフォーマンス46位だったが、ESGスコアが比較的高く9位と日本最高位に輝いた。その他、30位に日本電産の永守重信CEO、35位にファーストリテイリングの柳井正会長兼社長、55位にソフトバンクの孫正義会長兼社長、65位に河合利樹社長が入り、合計5人が入った。一方、日本電産の永守CEOは財務パフォーマンス12位、ファーストリテイリング柳井会長は財務パフォーマンス11位、孫氏も財務パフォーマンスは17位と、それぞれの総合ランキングより高かったが、ESGスコアが低かった。
評価の手順としては、北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカ、オーストラリアのエリアを含む株式インデックス「S&P Global 1200」の採用銘柄を対象とし、各企業のCEOをリストアップ。その際、評価の対象となるに十分な実績を確認するため、在任期間が2年未満の人は除外された。また有罪判決を受けた人や逮捕された人も除外された。この段階を経てリストに残ったのは29カ国870社のCEO881人(CO-CEOを含む)。
次にDatastreamとWorld Scopeを通して、CEOの着任日から2018年4月30日までの財務データを収集。1995年以前に着任した人については業種毎調整済み株主総利回りのデータが存在しないため、1995年1月1日を初日として計算した。そして、各CEOの在籍期間における国毎調整後株主総利回り、業種毎調整後株主総利回り、時価総額の変化の3種類の数値を基に算定した。株主総利回りについては、いずれも配当の再投資を含み、国毎調整後の場合には地域全体の上昇分を、産業別の場合には産業全体の上昇分については相殺する(差し引く)という方法をとった。時価総額の変化に関しては、配当、株式発行、株式買い戻し分を調整し、インフレの割合を調整後に米ドルに換算した。
国毎調整済み株主総利回りと業種毎調整済み株主総利回りは、リターンの割合が事業規模に比べて高いため小規模の企業の方が有利になりがちであり、時価総額の変化は大企業の方が有利となる傾向がある。従って、各CEOの全体的な財務データとして前述3種類の数値の平均を割り出しているのは、バランスが取れ、堅実な方法だとHBRは見解を示している。
今回リストアップされたCEOの平均在任期間は16年だった。
【ランキング】The Best-Performing CEOs in the World 2018
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