カリフォルニア州サンカルロスに拠点を置くIron Oxが製造した米国初の自律型ロボット農場が、このほど稼働を開始した。ロボット「アンガス」は、食料需要の拡大や労働力不足に対処する目的で同社が開発したもので、人工知能(AI)の活用、周年栽培、水耕栽培、収穫、スペースの効率的な利用等、農業が直面しているさまざまな課題に対処する機能を備えており、従来の農法の30倍近い生産力が発揮される。このロボットの発表以来、同社は投資家の注目を浴び、2017年には100億米ドルを超える資金が集まった。前年比29%の増加となったという。
2,000平方フィート(約186m2)の栽培スペースでは、大きさが4フィート(約122cm)×8フィートで重量は約800ポンド(約363kg)の白い栽培モジュールに収容された個々のポット(鉢)に、葉物野菜とハーブを植えている。
重量1,000ポンド(約454kg)のアンガスは、農場の周りを移動しつつ、農作業、収穫時期等の感知、栽培モジュールの運搬等を自動的に行う。Iron Oxの共同創業者ブランドン・アレクサンダー氏は「信じがたいほどインテリジェント」だと説明している。
この機器には自律的なロボットアームもあり、ポットを掴んで植物を収穫することも可能で、これにより収穫物のダメージを低減できる。アレクサンダー氏によると、この作業をできるようにすることは非常に難しく、機器が植物を1ミリ未満の単位で認識するような方法を開発する必要があったという。ロボットアームには4台のレーザーセンサーがあり、2台のカメラにより3Dで「見る」ことができ、病気、害虫、異常を特定することができる。
同氏によると、Iron Oxチームは、このレベルの精度と一貫性を開発するのに相当な歳月をかけた。小麦のように収穫に繊細さが要求されない機器とは異なる機能が必要とされるからだ。農作業用と運搬用、どちらのロボットアームもクラウドベースのAIソフトウェアである演算処理部にデータを提供し、その一方で、演算処理部から作業のタイミングを管理される。各ロボットは、仕事の進め方は知っているが、着手の時期は解らないのだという。
人間の直接的な関与については、植物科学者のチームが演算を監督し、農場全体のセンサーからのデータとロボットの搭載データを処理する。この他、種まきや収穫後の落ち葉集め、梱包等の作業も担当者が指示を出すシステムになっている。
国連食糧農業機関(FAO)の見積りによると、世界の人口は2050年までに90億人を超え、需要を満たすためには、現在より70%多い食糧を生産する必要がある。小麦や米、その他の穀物類は、現在より10億トン増量しなければならないという。しかし地球上の利用可能な農地のほとんどはすでに耕作されているため、FAOは既存の農地での持続可能な生産性の向上を強く訴えている。さらに、米国を初めとして農業分野での人手不足が深刻化している国も多く、アンガスのような機能を持つロボットは、飛躍的な増産が望まれている。
【参考ページ】America's first autonomous robot farm replaces humans with 'incredibly intelligent' machines
【参照ページ】UN: farmers must produce 70% more food by 2050 to feed population
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