九州電力は10月13日と14日、2日間にわたり、太陽光発電の出力制御指示を発動した。出力制御指示とは、固定価格買取制度(FIT)制度のもとに九州電力に売電している再生可能エネルギーの売電を一時的に停止するもので、離島を除くと今回が初の国内発動。制御量は、10月13日が43万kW(再生可能エネルギー接続量の7%)、10月14日が71万kW(同12%)。
九州電力は、「電力の安定供給確保の観点から、火力機抑制などの回避措置を行ったとしても、電気の供給量(発電出力合計)が、その需要量等(エリア需要予想、連系線運用容量)を上回ることが見込まれたことから、余剰電力を満たす発電事業者さまに対して、以下の内容で、出力抑制の指示等を行いました」と説明し、停電阻止のためとした。
電気の需要が供給を下回る場合には、電力事業者は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が送配電等業務指針の下で策定した「優先給電ルール」に則り、域内での供給量を抑止する取組が求められている。OCCTOには、日本の全電力事業者が法令で加盟を義務付けられている準公的機関。九州電力は、2018年のゴールデンウイーク時に、太陽光発電が電力需要の8割程度を占める事態が発生し、電力需要が低く推移する秋に再生可能エネルギーの出力制御の可能性があると当初から予測していた。出力制御を指示する場合には、制御日前日に制御対象の発電事業者に通知することとなっている。
電力広域的運営推進機関の優先給電ルール
(出所)九州電力
優先給電ルールでは、発電量調整が比較的容易な電源から発電制御することとなっている。現在のルールでは、揚水発電抑制、火力発電抑制、域外電力供給、バイオマス発電抑制の順で手を打った後に、太陽光・風力発電の制御となる。一番最後まで制御させないのは、原子力・水力・地熱発電。資源エネルギー庁はこれらを「長期固定電源」と位置づけており、発電量調整が難しい上に二酸化炭素排出量が低いためと説明している。そのため、今後、原子力発電所の再稼働が増えれば、その分再生可能エネルギーの出力制御の可能性が高まることとなる。
上記の通り、発電量調整には、域外への電力供給も組み込まれている。九州電力は10月1日、北九州市と下関市の間にある関門連系線を通じて中国電力に電力を送電した。九州電力は以前、関門連系線の活用量は13万kWと見立てていたが、広域的な系統調整運用を強化する方針を経済産業省も示したこともあり、今回、系統調整を担当する電力広域的運営推進機関が融通し、以前の約9倍の最大112.5万kWの枠を確保した。太陽光発電の出力制御された10月13日と14日は、さらにそれを上回る196万kWを中国電力に送電していた。
今回、九州電力に出力制御を指示された太陽光発電事業者は、2017年1月25日までに連系承諾した発電所は500kW以上が対象、それ以降の連系発電所は10kW以上が対象。後者については10KW未満も本来は対象だが、今回は対象から外した。出力制御についての補償は、前者は年間30日間までは無補償。後者は無制限で無補償。
バイオマス発電に含まれる廃棄物発電については、自治体のごみ発電は稼働させないとごみ処理の問題が発生するため対象外となった。
国連機関やEU等は、再生可能エネルギーの普及やコスト削減のためには、事業予見性が重要としている。今回、大規模に太陽光発電の出力制御がなされたことで、発電事業者にとっては不安材料として大きくのしかかる。
【参照ページ】『再生可能エネルギーの固定価格買取制度』に基づく再エネ出力制御指示に関する報告
【参照ページ】優先給電ルールの考え方について
【参照ページ】今秋の九州本土における再生可能エネルギー出力制御実施の見通しのお知らせ
【参照ページ】再生可能エネルギー出力制御見通し
【参照ページ】資源エネルギー庁がお答えします!~再エネについてよくある3つの質問
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