英シンクタンクのカーボントラッカーは8月21日、二酸化炭素排出量取引市場(EU-ETS)における炭素排出枠(EUA)価格が、2017年5月から310%上昇したと発表した。今年開始時点と比べても120%上昇し、現在1t当たり18ユーロ。カーボントラッカーは、2020年には40ユーロまで上がると見通した。
EUA価格が上昇している背景には、2019年1月から導入予定の「市場安定化リザーブ(MSR)」がある。MSRは、EUA価格を操作するため、中央当局が市場からEUAを吸収したり放出したりするもので、昨年導入する方針が決定した。2017年のEUA価格は4米ドルから8米ドルと低水準を推移。欧州委員会は、市場余剰分のEUAの25%をMSRとして吸収し、さらに2014年から2016年までの余剰分9億tもMSRとして吸収する方針をすでに決定している。そのため、現在はまだ導入前だが、すでに市場が反応し、価格が上昇した。
カーボントラッカーは、市場で流通するEUA量を、2018年で17億t、2023年で7.5億t、2030年で6億tと試算。価格は、2019年に35ユーロ/t、2020年から2021年は40ユーロ/tまで上がると算出した。
またカーボントラッカーは、EUA価格の上昇に伴い、企業の排出量抑制に拍車がかかると推定。2019年から2023年までの5年間で4億tの二酸化炭素排出量が削減されるとした。削減の内訳は、燃料が石炭から天然ガスに変わるエネルギー転換が3分の2、省エネが3分の1と算出した。
【参照ページ】Carbon Countdown: Prices and Politics in the EU-ETS
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