世界経済フォーラム(WEF)は8月15日、人工知能(AI)が金融サービスを激変させるとするレポートを発表した。金融業界の中でAIは、管理部門のコスト削減のために検討するところから始まったが、サービスとしてAIを活用し競争優位を発掘する段階に移ってきている。
今回のレポートは、AIが金融サービスをどのように変えていくかというインサイトをまとめたもの。AI活用は当初はコスト部門のコスト削減目的で導入されてきたが、今は顧客サービスの進化のために活用されるようになってきている。そのため、以前はコスト競争に陥っていた企業競争が、AIを用いた差別化サービスの磨き込みへと変化してきた。
とりわけ将来の金融サービスは、データをもとにAIが最適な解を導き出し、顧客のパフォーマンスを上げていく予測。そのための技術進化や従業員のスキルセットの転向が企業経営にとって重要な要素になってきている。また、データの相互共有が進むことで、詐欺行為やマネーロンダリングの防止にもつながると見通した。
また業界構造としても、規模の経済を追求しAI開発の投資余力のコスト競争力を享受できる巨大企業と、巨大企業が手をつけないニッチ市場の中小プレーヤーに二極化するとした。それにより、国単位や地域単位で存在感を示してきた企業や中堅企業は市場から締め出されるという。
今回のレポート作成のステアリングコミッティには、JPモルガン・チェース、アリアンツ、シティグループ、HSBC、ロイズ・バンキング・グループ、UBS、ドイツ銀行、クレディ・スイス、ブラックロック、マスターカード、S&Pグローバル等が参加。デロイトも作成に協力した。
また同レポートは、先進事例として中国平安保険と米Aladdinを紹介。中国平安保険は、AIを活用し保険加入の信用査定と保険金支払を迅速に行えるプラットフォーム「One Connect」を中国の中堅銀行向けに提供。売上に大きく貢献している。また、Aladdinは、ファンドマネージャー向けにリスク分析とポートフォリオ構築をAIを用いて実施できるツールを提供。実際にブラックロックは2022年までに売上の30%がこのツールから得られると見ている。
【参照ページ】Report: AI Creating Big Winners in Finance but Others Stand to Lose as Risks Emerge
【レポート】The New Physics of Financial Services
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