米モンタナ州の連邦地方裁判所は8月15日、カナダのエネルギー大手トランスカナダによる長距離石油パイプライン「キーストーンXLパイプライン建設プロジェクト」のルート変更に関し、国務省に環境アセスメントを全面実施するよう命じる判決を下した。環境への悪影響を主張していたIndigenous Environmental Network等の原告側勝訴となった。
キーストーンXLパイプライン建設プロジェクトは、前オバマ政権時代にはオバマ大統領が気候変動の観点から否認していたが、現トランプ大統領が3月24日に建設を承認する大統領令に署名するなど大きく後押ししている。許可の鍵を握る環境アセスメントは、同プロジェクトが米加国境を跨ぐため、国務省が管轄しているが、過去二転三転した判断が下されてきた。国務省は当初2011年に環境アセスメントにより、トランスカナダにルート変更を要求し、同社は2012年に新ルートでプロジェクト再申請を実施。国務省は2013年に環境アセスメントで影響なしと判断したが、2014年にホワイトハウスの意向もあり撤回している。
その後、トランプ政権になり、トランプ大統領は2018年3月、同プロジェクトを承認する大統領令に署名。それを受け国務省は、前回の環境アセスメントの結果を踏まえ、部分的なアセスメントを再度実施し「影響なし」との結果案を発表した。今回の裁判では、このアセスメントが大きな争点となった。判決では、ルート変更後の環境アセスメントは完了していないとの見方を示し、国務省に対して環境アセスメントのフルセットでの再実施を命じた。原告側は2014年の承認撤回を根拠に同プロジェクトの認可そのものを白紙に戻すことも要求していたが、その主張は退けられた。
【参考】【アメリカ】 トランプ大統領、「キーストーンXLパイプライン建設計画」を承認する大統領令に署名(2017年4月7日)
今回の判決を受け、国務省が環境アセスメントの全面再実施を行うとなると、プロジェクトの進捗が大きく遅れることとなる。トランスカナダは、今年中に予備作業を終え、来年初旬には投資の最終決定をしたい意向を示していたが、後ろ倒しはほぼ確実になったと見られる。
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