ストックホルム大学ストックホルム・レジリエンス・センターの研究者を中心としたチームは8月6日、パリ協定での国際目標を達成したとしても、地球が「Hothouse Earth(温室地球)」状態に入るリスクがあるとする論文を、米科学誌「PNAS」で発表した。執筆者には、スタンフォード大学、ケンブリッジ大学、アリゾナ大学、エクセター大学の研究者らの名前もあり、迅速な脱炭素社会への移行を訴えた。
地球の気温は現在、産業革命前水準から1℃高く、10年毎に0.17℃上昇している。これを2℃未満に抑制しようというのがパリ協定での合意。しかし今回の論文では、仮に2℃に収める努力に成功したとしても、地球システムの他の要素を誘引し地球の気温は4℃から5℃まで上がると予測。「Hothouse Earth(温室地球)」状態に入るリスクがあるとした。その状態だと海面は今日より10mから60m上昇する。今回の論文により、地球の気温上昇を2℃未満に抑えることは今までの想定より難しいことがわかった。
今回の研究では、気温上昇により他の要因に影響を与えるフィードバック・プロセスの考慮に入れたのが大きな特徴。中には、ある閾値を超えた場合に大きな変化をもたらす要因もある。それらが相互に連関しあって気候変動インパクトを増幅させていく。具体的なフィードバックには、永久凍土の溶解、改定のメタンハイドレートの溶解、海洋バクテリアの呼吸増加、アマゾン熱帯雨林の消失、亜寒帯林の消失、北半球の万年雪消失、夏の北極海氷の消失、南極海氷の減少等がある。
気温が1℃から3℃上がると、まず北極圏、グリーンランド、アルプス山脈、南極西部の氷が大幅に溶け出し、太平洋のサンゴ礁も急速に白化が始まる。さらに3℃から5℃では、亜寒帯林とアマゾン熱帯雨林の消失、エルニーニョ・南方振動(ENSO)、熱塩循環、偏西風が大きく変化していく。さらに5℃を超えると北極圏の冬の氷、南極東部、シベリア永久凍土の溶解を招く。
(出所)ストックホルム・レジリエンス・センター
同論文は今後の対策として、単に二酸化炭素排出量を削減するだけでなく、土地利用保護、生物多様性保護、森林育成等を通じて大気中の炭素を今以上の速度で固定していかなければならないとした。
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