英環境・食糧・農村地域省は7月19日、気候変動問題に対応するための「第2次国家適応プログラム(NAP)2018-2023」を公表した。英国では、2008年気候変動法に基づき、5年毎に国家適応プログラムい策定が政府に義務付けられており、環境・食糧・農村地域省が策定調整の責任を負っている。第1次国家適応計画2013-2018は、2013年に策定された。
気候変動対応では、気候変動の進展を抑制する「緩和」と、気候変動後の社会適応力を高める「適応」の双方が必要となっている。英国の2008年気候変動法は、国家適応プログラム(NAP)の5年毎の策定、有識者で構成する独立行政機関「気候変動委員会(CCC)」とCCCの配下に気候変動適応を検討する「適応小委員会(ASC)」の設置、5年毎の気候変動リスク評価(CCRA)報告書の発行、各業界団体に気候変動適応状況報告書作成を命じる「適応報告(ARP)指令」等を規定した。現在、環境・食糧・農村地域省の下に、省庁間調整機関として「国内適応委員会」が設置されており、NAP策定の中心的役割を担っている。
第1次国家適応計画は、第1次気候変動リスク評価(CCRA)を基に、2013年7月に発表。建築物環境、インフラ、健康とレジリエントなコミュニティ、農林業、自然環境、ビジネス、地方行政の7分野を対象に、31の目標を設定した。進捗状況は気候変動委員会(CCC)が評価し、進捗評価報告書が英国議会に提出されている。気候変動リスク評価(CCRA)は、適応報告指令(ARP)による社会インフラを担う事業者から個別の報告を考慮に入れている。ARPは、交通、上下水道、発電、送電、配電、ガス輸送、農林水産業、医療機関、データセンター、通信会社、規制当局、自然遺産管理団体等の事業者に対し、気候変動影響評価の実施と適応策の報告を義務付けている。ARP第1期(2009-2011)では91団体が、第2期(2013-2016)では、105団体が報告を行った。
今回の第2次国家適応プログラムも、2016年に適応小委員会(ASC)が発表した第2次気候変動リスク評価(CCRA)を基に策定された。今回のNAPでは、脅威が予想される洪水、沿岸部破壊、旱魃、猛暑、海面上昇、異常気象についての政府及び企業の適応を強化する内容を追加し、とりわけ第1次NAPにはなかった病院、学校、刑務所等の公共施設での適応強化を盛り込んだ。土地開発や不動産開発においても将来の洪水リスクを考慮しなければならないという内容にも踏み込んだ。気候変動に適応できる食品サプライチェーンの構築にも言及した。ARP第3期(2018-2021)は、策定の行政命令は出さないが、引き続き自主参加を呼びかける。
今回の発表後、気候変動委員会(CCC)のKathryn Brown委員は、CCCのホームページ上で、第2次NAPは不十分との見方を示した。CCCが認識した気候変動適応65リスクのうち27リスクが盛り込まれていないという。具体的には、家庭内での猛暑対策や、損害保険プログラム「Flood Re」を沿岸部住宅へ適用しない措置に向けた段階的検討等がNAPに入らなかったことに懸念を示した。
【参照ページ】Government publishes updated plan to tackle climate change
【プログラム】second National Adaptation Programme
【参照ページ】The new National Adaptation Programme: Hit or miss?
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