米エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は7月10日、化石燃料ダイベストメント(投資引揚げ)のトレンドを分析したレポートを発表した。IEEFAは、財団から資金援助を受けエネルギーの経済的側面を研究する民間研究機関。原油、天然ガス、石炭等の化石燃料関連のエネルギー業界は、投資家から「投機的銘柄」見られ始めていると伝えている。化石燃料ダイベストメントが進む背景については、気候変動への懸念だけでなく、複合的な要因が絡み合ったものと分析した。
同レポートは、過去3年間から5年間で化石燃料ダイベストメントを実施する機関投資家が増えており、化石燃料関連銘柄を除外する株式インデックスが除外しないインデックスをアウトパフォーム(リターンが上回る)ようになっていると現状をまとめている。以前はドル箱ブランドとして君臨していた化石燃料が急速に魅力を失っている背景には、直接的には水圧破砕技術の登場により広がったシェールガスやシェールオイル革命がもたらした2014年の原油価格暴落があるとした。それにより、化石燃料「神話」が崩れ、機関投資家が化石燃料関連企業に対して慎重姿勢をとるようになってきているという。化石燃料関連企業は、総花的に儲かる投資先から、個別企業の戦略や方向性の判断が不可欠となってきた。
さらに、化石燃料生産国間の政治闘争、競争激化、新たなイノベーション、気候変動等、複数のネガティブ要因が出てきたことで、化石燃料銘柄への投資を「投機的」とみる機関投資が増えているという。同レポートは、生じているリスクを、純粋な財務リスク、技術・イノベーションリスク、政府規制リスク、訴訟リスクの4つに分類した。その結果、投資先から化石燃料関連企業を外し、他のブルーチップ(株式優良銘柄)に投資をシフトさせる動きが置きている。目下全ての機関投資家は、化石燃料ダイベストメントを考慮しなければならないところまできていると言及した。
一方、ダイベストメントに反対する機関投資家が依然多くいることについていは、同レポートは「先見の明がない投資」であり、フィデューシャリー・デューティー違反だと言明。ダイベストメントではなくエンゲージメントにより化石燃料企業の方針転換を図るという手法についても、企業の主要事業の方針を大転換させるのは望み薄と切り捨てた。米大学基金の中でエンゲージメント派がいることについては、基金のリターンではなく、一部の大学OB・OGの富裕層の化石燃料関連資産価値を保護しているだけだとした。
【参照ページ】IEEFA report: Fund trustees face growing fiduciary pressure to divest from fossil fuels
【レポート】The Financial Case for Fossil Fuel Divestment
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