経済協力開発機構(OECD)は7月4日、2018年版「雇用アウトルック」を発表した。同レポートによると、2017年末時点でOCED諸国における15歳から74歳までの雇用率は61.7%で、金融危機後初めて危機以前の水準まで回復した。今後もそのトレンドは続き、2018年末には62.1%、2019年第4四半期には62.5%まで達する見込み。特に高齢者や小さな子どもを持つ母親、若者、移民といった労働市場で弱い立場にある人々の参加率向上がドライバーとなっている。
失業率も、金融危機以前と同等またはそれを下回る数値まで達している。日本や欧州、米国、オーストラリアにおける求人数は歴史的に高水準にあり、OECD諸国の失業率は今後も下がり続けると予測される。2018年末には5.3%、2019年末には5.1%の見込みだ。一方で仕事の質や、雇用の保証の面では必ずしも全ての人にとって好ましいわけではなく、労働可能年齢人口における貧困率は2015年の10.6%と、その10年前の9.6%より高まっている。
もう一つの懸念は賃金成長率の低さだ。2017年末におけるOECD諸国の名目賃金成長率は10年前の半分しかなく、2017年第4四半期の平均名目賃金成長率が3.2%だったのに対し、2007年第2四半期は5.8%だった。賃金成長率は低所得者層で鈍化する一方、上位1%の人の給与水準は、中央値の所得層よりはるかに速いペースで増え続けている。
そのためOECDは、スキルを持たない低賃金労働者を支援するような仕組みの構築が不可欠だと警鐘をならす。必要なのは適切な政策と、社会的支援者らとの連携によるインクルーシブな成長だ。低いインフレ率や生産性の低下、低賃金雇用の拡大もこのようなトレンドに拍車をかけ、特にパートタイム労働者にとって状況は厳しい。多くの国では失業手当が薄くなる傾向にある一方、失業状態が長期化することもある。失業手当を受け取れているのは、OECD諸国の求職者の3分の1足らずというデータもある。
OECDが提唱するのは、人生に渡って高い質の教育やトレーニングを受けられる機会を提供することだ。OECDの「Policy Framework for Inclusive Growth」によると、スキルの低い人は、高い人に比べてトレーニングを受ける機会が3分の1に留まる。
今年度の雇用アウトルックでは、キャリア形成における男女差についても分析してる。近年、平均賃金の男女差は大幅に縮まっているが、それでもなお、2015年におけるOECD諸国の女性の平均賃金は男性より39%低い。その背景には労働市場への参加率や労働時間、時給の差がある。特に差が大きいのは女性のキャリアの前半。インクルーシブな労働市場を実現するには、父親と母親双方へのフレックスタイム制の活用拡大等、女性の労働参加を促すための企業方針や政策が重要だとした。
【参考サイト】
OECD “Rising employment overshadowed by unprecedented wage stagnation”
(http://www.oecd.org/newsroom/rising-employment-overshadowed-by-unprecedented-wage-stagnation.htm)
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